第15章 風見鶏の家
「っクシュ!!」
流石に冷えてきて、湖から出て濡れた服を日向に干し着替える。
「パンツまでグショグショで気持ち悪いんだけど……」
「う、すみません……」
わたしは荷物を外してから水に入ったから着替えがあったけど、先輩は荷物ごと湖に落ちたから、荷物もすべてびしょ濡れになってしまった。
居た堪れない気持ちで火に当たっていると、どこからか小さな子供の鳴き声が聞こえてきた。
「サクも聞こえた?」
わたしと同じように辺りを見回しながら、先輩がまだ濡れた服を着込む。
「はい!
こんな森の中で迷子でしょうか?」
わたしも急いで装備を身につける。
「ここに来る途中、大きな風見鶏の家があったからあそこの子かも……」
とりあえず声のする方に歩いていくと、小さな男の子が泥だらけの服で泣きながら歩いていた。
そして、わたしたちに気がつくと怯えた顔で立ち止まった。
わたしはゆっくりその子に近づくと、しゃがんで視線を合わせ、そっと話しかけた。
「わたしはサクっていうの。
キミのお名前は何て言うの?」
男の子は少し躊躇ってから、小さな声で「……アオ」と言った。
「アオくん?
アオくんは迷子になっちゃったの?」
「……アオ、お家……。
う、うわーん!!」
男の子は目にいっぱい涙を溜めながら何かを喋ろうとして、でも堪え切れずに大声で泣き始めた。
落ち着くまで木陰に座って背中を摩ったりしていると、まだしゃくり上げながらも喋り始めた。
「アオね、お花を探してたの。
そしたらね、そしたら、帰り道がわからなくなっちゃって、悲しくなっちゃってね。
泣いてたの」
ゴシゴシ涙を小さな両手で拭きながら一生懸命しゃべるアオの口に、かばんの中にあったキャラメルを掘り込んでやる。
「……甘い」
ほっぺに両手を当ててビックリした顔をするアオに微笑む。
「キャラメルだよ。
悲しい時に甘いものを食べたら元気がでるでしょ?」
「うん!ありがとう、お姉ちゃん」
満面の笑顔でお礼を言うアオの頭を撫で、「どういたしまして!」と笑顔を返す。
やはりアオの家はあの風見鶏の家らしく、わたしたちはそっちに向かって歩き出した。
しかし最初は家に帰れるとご機嫌で話していたアオが、だんだん歩きながらコックリ、コックリと船を漕ぎ始めた。