第15章 風見鶏の家
「わーぁ、きれい!!」
ここは深い森の中。
先輩との久しぶりのツーマンセルの帰り道、小さな湖を見つけここで休憩をとることになった。
とっとと木の上に登り、幹に背を預けて本を読み出した先輩を尻目に、湖に手をつけてみる。
少し冷たいけど、これなら……!
おもむろにベストや忍刀などの装備を外し、アンダーとズボンだけになると、ドボンと水に飛び込む。
ぷはっと顔を上げると、木の葉越しの陽光がキラキラと輝いた。
「先輩も入りましょうよー!
気持ちいいですよ!!」
今日は35度の真夏日。
森の中とはいえかなり蒸す。
水浴びにはもってこいだ。
「……えー、いい。」
チラリと本から顔を上げた先輩は、面倒くさそうにそれだけ言うとまた本に視線を戻してしまう。
「……」
つまらない。
むーとしかめ面をしていたが、いいことを思いついて再び水の中に潜る。
しばらく泳いで楽しんでいるふうを装い、気配を消して先輩の真下まで近づく。
水中から確認すると、先輩はまだ集中して本を読んでいる。
足裏にチャクラを貯めて水面を蹴り、一気に先輩のところまで跳ねると、本を奪い地面に放り投げ、先輩にしがみつき湖面にダイブする。
バチャーン…ーーー!!!
あ、あれ?うまくいっちゃった!?
ただ気を引きたかっただけで、避けられたり返り討ちにあったりするかと思っていたのに、あっけなくうまくいき困惑する。
先輩の表情を見ようにも、飛び込んだ時にできた泡で何も見えない。
「ぷはっ!」
2人同時に水面から顔を上げると、仏頂面の先輩と目が合う。
「……背中、痛いんだけど……」
先輩に覆いかぶさるように落ちたから、先輩は水面に背中を強く打ちつけてしまったようだ。
「……、す、すいません。
まさか避けないとは思わなくて……」
先輩が半眼でアワアワしているわたしを睨む。
「オレにこんなことしてくんのサクだけだからね。
付き合う前からホント遠慮なかったよね。
話しかけても無反応なオレを気にもかけず話しかけまくるわ、部屋に勝手に上がり込んで我が物顔で寛ぐわ……」
うう、返す言葉もない!!
先輩の怖い顔に思わず目を逸らそうとしたとき、水鉄砲で顔に思い切り水をかけられた。
「んぶっ!!」
思わず変な声が出てしまうと、先輩が「変な顔」と言って笑った。