第14章 やりたいこと 下
あれから数日経ち、オレは任務の報告書を出すべく火影室を訪れていた。
「うむ、ご苦労じゃった」
キセルを咥えながら報告書にさっと目を通し、三代目が顔を上げる。
「カカシ、ちょっと風に当たろうと思うのじゃが、付き合わんか……」
「?……はい」
に、と笑って立ち上がる三代目の後について屋上に出る。
外は夕日で何もかもがオレンジ色に染まっていた。
「見事な夕焼けじゃな……」
「……はい」
自身も顔をオレンジ色に染めながら、三代目が柵の前に立ち夕日を眺める。
「カカシ、サクをどう思う?」
付き合っているのがバレたか……?
いきなりの質問にドキリと心臓が鳴る。
表面上は平静を装って質問の意図を尋ねる。
「どう、とは……?」
「暗部にあやつがおることじゃ」
あ、そっちね……。
内心安堵しつつ、ろ班の隊長としての意見を述べる。
「よくやってくれてると思います。
任務に忠実ですし、サクの幻術や火遁は実際とても優秀です。
ただ、優しすぎるところがあるので、いつか心を壊さないか心配ではあります……」
任務の後、魂が抜け落ちたようにぼーっとしているサクを思い出す。
何も写していない目が危うくて、そういう時はなるべく体温を感じられる位置で傍にいることにしている。
「……そうか」
まだ夕日を見つめている三代目の横顔からは、感情は読めない。
先を話そうか迷っていると、三代目が先に口を開いた。
「……サクを里に連れ帰って忍として育てたが、それがあの子にとって良かったのか未だに迷うんじゃ。
もっと違う家に拾われたら、命の危険のない場所に預けていれば、もっと幸せな道もあったかもしれん……」
ああ、だから三代目はサクに何になりたいか、なんて聞いたのか……。
元々忍の世界、上から命じられたことがすべてだ。
他の道に進む忍は皆無ではないがかなり少数派だ。
「サクが言ってました。
三代目に拾われて幸せに育ったと。
ビワコ様に色々教えてもらったんだと、嬉しそうに」
三代目が驚いた顔でオレの方を振り返った。
しかしすぐに穏やかな顔になり、一つ頷いた。
「そうか……」
「はい」