第14章 やりたいこと 下
ザザーっと強い風が2人の間を通り抜けていく。
「カカシ、付き合わせてすまんかったな」
「いえ」
階下へと続くドアへ向かいながら笑顔を浮かべた三代目についていこうとすると、三代目がこちらを振り返った。
「カカシ、サクを泣かせるなよ。
あれはワシの大事な娘じゃからな」
「え!?」
次こそ心臓がドキリと跳ねる。
「ふふ、お前の慌てた顔なんて初めて見たの。
2人が恋仲なのはとっくに知っておる。
ワシがくっつけたようなもんじゃからな」
得意そうに言う三代目に、ずっと頭の隅に引っかかっていたことが事実だったと理解する。
「付き合う前に2人での任務が多かったのは、三代目の差金ですか……。
ベッドがひとつしかなかったり、1人で十分な密書の受け渡し任務を2人で行かせたり……」
「なんのことかの」
楽しそうにしらばっくれる三代目を呆れて見る。
「もちろん奥手なサクのためでもある。
じゃがの、ワシはカカシ、お前のためにこそサクをお前に近づけたんじゃ」
「え……、オレ、ですか?」
意外な言葉に答えを探るように三代目を見返すと、三代目がオレの方にちゃんと向き直る。
「サクには昔から不思議な力がある。
人の懐に音もなく不快にもさせず、いつの間にか入っていく。
そして、優しく包み込むような不思議な力じゃ。
だからお前にサクを沿わせると自分を顧みない危ういところが和らいで、地に足がつくような気がしての」
自分を見透かされていたようで、恥ずかしさに顔が赤くなるのを感じる。
「……、その通りです。
オレは、まんまと三代目のワナにかかっちゃったんですね……」
「ふふ、そうじゃの」
やられた……。
「サクのこと、大切にします」
「おお、そうしてやってくれ」
三代目は次こそ振り返らずに火影室へと戻っていった。
オレは脱力してその場にしゃがみ込み、長いため息を吐いた。
割と多かったサクとのツーマンセルが最近めっきり減ったのもそのせいか……。
もし違えば墓穴を掘ることになるから聞けなかった謎が、今日解けた。
これからはもう少し堂々と里でもデートできるし、ま、よしとしよう。
サクにどう伝えようか考えながら、オレはゆっくりとサクが待つアパートへと歩き始めた。