第14章 やりたいこと 下
ご飯を食べた後、わたしたちは月一の掃除をする為あの隠れ家に来ていた。
日が登ってきて、森の中にいても暑くて汗が流れる。
窓を開けてクッションをひなたに干して、部屋に入ってしまった葉っぱを掃き出す。
「あつー……」
Tシャツの裾をパタパタしながらひとりごちる。
「夏はここ使えないね」
「はい……」
先輩も汗だくだ。
口布も、額当ても、暑そう……
部屋の半分を占めていたクッションがなくなってがらんとしてしまった小屋。
中は影になっているが、真夏の日中はそれでも暑い。
ぞうきんで埃をとっていると、急に先輩に腰を抱き寄せられる。
「わわっ!」
急に捕まってバランスをくずし、そのままの勢いで先輩の膝の間に背を向けるように座らされる。
「せ、先輩、わたし汗臭いから……」
汗だくだし恥ずかしくて逃げようとするが、腰にまわっていた手に力が込められて、逆に抱き寄せられてしまう。
「そんなことないよ
いつものサクのいー匂い」
首のうしろあたりにキスをされて、ピクリと肩が揺れてしまう。
「サク、夕方から任務でしょ?
今からあんまり動き回ってると、バテるよ」
「……こっちの方が暑くてのぼせちゃいそうです……」
「ふふ、確かにね。」
「ここより、木の下の木陰の方が涼しいかも。
大体片付いたし、クッションが乾くまで、下で休憩しませんか?」
「うん、賛成」
木の枝を伝って下に降りると、木陰を通り抜ける風が汗だくの体を冷やしてくれる。
木の幹を背にふたりでもたれ掛かって座ると、ヒヤリと冷たい木の幹が肌に触れて心地いい。
「降りてきて正解だったね」
「はい。
あ、お水飲みますか?」
「ん、ありがと」
凍らせてきた水を渡すと、クイッと口布を下げて喉を逸らせ、先輩が水を飲む。
飲み込むときに喉仏が上下するのが妙に色っぽくて、つい凝視してしまう。
まくって剥き出しになった太い腕も、今は閉じられたオッドアイも、口布の下に隠れたホクロのある口元も、全部が色っぽくて、わたしは未だに先輩を見るだけでドキドキしてしまう。
「そんなに見られたら、飲みにくいんだけど……」
「え!?わっ、あの。すみません!」
笑って言われて慌てて目を逸らすと、クイッと顎を掴まれてもう一度先輩の方を向かされる。