第8章 7話
ずっと避けられていたの個性の話。
いつも聞けば悲しそうな顔をするからが話してくれるまで待っていようと思っていた内容だった。
『私の個性は抱きしめた相手の心を落ち着かせる事が出来る
たったそれだけ・・・
ヒーローには・・・向いてない・・・』
焦「けどそれだったら災害にあった人のケアとか・・・」
『私のキャパは5人
5人に使えば私は強制的に眠りに入る
たった5人にしか使えないのに・・・どこに使うっていうの・・・』
何かを耐えるようにも焦凍の背中の服を強く握りしめる。
『私は焦凍君がうらやましかった・・・
こんな個性で雄英に通ったって私は強い個性の人には勝てない・・・
そんな力があるのに使わないなんて・・・私はずるいなって思うよ・・・』
が泣いていると気づいたのは声が変わったからだ。
一度も焦凍の前で泣いたことなどないが泣いている。
『兄さんもすごいヒーローなのに私はなれないの
けど・・・私は焦凍君の傍にいたくて頑張ったつもりだった・・・』
焦「・・・・・」
『個性が戦いで使えない私はせめてみんなと戦えるように鍛えてもらった』
焦「(それがこの間の近接戦闘か・・・)」
『私は個性が使えなくても焦凍君やみんなを必ず守るから・・・!
焦凍君はあなたの力で焦凍君しかなれないヒーローになってほしい』
焦「(・・・にここまで言わせて意地を張るのか、俺は)」
好きな人を泣かせてまで守りたい誓約だっただろうか。
父親が憎いのは変わらないし、過去は変えられない。
けれど焦凍もけじめをつける必要がある。
抱きしめていた手を離し、の顔を見るとぽろぽろと涙が絶え間なく流れている。
それを服の袖で拭ってやる。