第2章 1話
しばらく抱きしめ合っていたが、焦凍が力を緩めたのでも力を緩める。
焦「・・・帰る」
『うん
行こうか』
自分から手を繋いできてゆっくりと歩きだした焦凍に、も手を握り返して歩幅を合わせて歩き出す。
数分歩けば立派な日本家屋の豪邸が見えてきた。
表札には”轟”と書いてある。
『(まさかのお坊ちゃま・・・
しかも”轟”ってなんか聞いたことあるような・・・)』
豪邸にぽかんとしていると、繋いでいる手をひっぱられる。
なんだろうと視線を向けると、少し顔を赤くしながらもじもじしている焦凍がいた。
『(何急に。かわいい・・・)』
焦「・・・・・・・お姉さんはさ、」
『ん?』
焦「いつもあの時間に病院に来るの?」
『今日はたまたま兄のお使いで来ただけだから・・・
どっちかっていうと今日限りって感じかな』
素直にそう伝えると焦凍はショックを受けたように固まった。
『え?どうしたの?』
焦「・・・もう会えない?」
『えっ・・・』
こてんと傾げられた首に恥ずかしさからか少しだけ染まった頬。
焦「お姉さん?」
『ご、ごめんね
(かわいい子だとは思ってたけど将来はイケメンか・・・)』
破壊力のあり過ぎる攻撃に鼻をつまんで後ろをむいてしまったが、焦凍が心配そうにのぞきこんでくるのですぐに大丈夫と笑って返した。
一度手を放して鞄に入れていたノートをちぎる。