第15章 14話
家に到着し、家まで荷物を持ってくれた焦凍にお茶でもどうぞと家に上げる。
夏場で久しぶりに外の空気が入ってきたからか、むあっとした空気が部屋から流れてきた。
取り敢えず窓を開けて換気をする。
『そういえば私も寮生活になるから荷物まとめないといけないんだよね』
焦「そうなのか?」
『うん
また攫われたら面倒だしね』
冷たいお茶を入れてどうぞと出す。
焦「そうか
なら一緒に過ごせるな」
『まぁ・・・そういうことになるよね』
しーんとした部屋の中ではいつも何を話していたかと記憶を探る。
焦凍といて気まずくなったのは初めてだ。
焦「・・・・」
『はい』
急に真剣な顔をして話しかけてきた焦凍に思わず敬語で返しながら、言いにくそうにしている次の言葉を待つ。
焦「その・・・俺に何かしてほしい事はないか?」
『え?してほしい事?』
焦「ああ
なんでもいい
なにか言ってくれ」
『急に言われても・・・』
なにか思う所があってそう言ってきているのだとはわかるが、急に言われてもこれといってしてほしい事はない。
どうにか絞り出そうとしばらく考えた結果、手を繋ぎたいと言った。
焦「そんなことでいいのか」
『いや、まぁ・・・うん』
絞り出してこれしか出てこなかった自分にどうなんだと突っ込みたいところだが、やってもらって嬉しいのは事実なのでまぁいいかとも思う。
向い合せになりなぜか両手を握ってきた焦凍に首を傾げる。
『なんで両手?』
焦「いや、片手よりいいかと思って・・・
嫌か?」
『ううん、嬉しいよ
ありがとう』
そう言えばほっとしたように笑ってくれるのでも安心した。
『寮ってどんなのだろうね』
焦「和室だといいな」
『だね』
両手を握り合ってしばらくいつも通りの他愛のない話をする。
このなんでもない時間が日常に戻ってきたんだと思わせてくれた。