第2章 1話
『ねぇ・・・お腹でも痛いの?大丈夫?』
男の子の前にしゃがみなるべく優しい声で話しかける。
「え・・・?」
はじかれたように勢いよく顔をあげた男の子は、オッドアイの瞳を涙でゆらゆらとゆらしていた。
『もう遅い時間だよ。
帰らないとおうちの人に怒られるんじゃない?
それとも病院の中におうちの人がいるのかな?』
内心泣いてる子どもは苦手だと思いながらも、一度話しかけてしまった手前あとには引けない。
「お、母さんが・・・ここにいるんだけど、会えないんだ・・・」
今にも零れ落ちそうなほど溜まっている涙を流さない様に必死にこらえながらまたしても下を向いてしまう。
『(会えない・・・ってことは重い病気とかなのかな・・・)
今ひとり?他にお父さんとか身内の人はいる?』
重い病気とかであれば子どもだからと外で待たされているのかも知れないと思い、聞いてみたがこの問いには首を横に振るだけだった。
『(てことはひとりか・・・
小学生がひとりで来れる距離なんか知れてるだろうしね・・・よし)
ねぇ、お姉ちゃんすぐに戻ってくるからここで少し待っててくれる?』
「え?・・・なんで?」
もう一度驚きで顔を上げた男の子はぽかんとした顔をしている。
ふわりと優しく頭を一撫ですると、さらに驚きで目を見開く。
『一緒に帰ろう』
撫でられた頭を口を開けたまま自分の手で触る男の子を待たせない様に全力疾走で病院に向かった。