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再会・再開

第1章 再会・再開



「太宰?おい太宰!」

「何?五月蝿いねぇ中也は。見て判らないのかい?私は今仕事中なのだよ。ほらほら」

「否、それは仕事とは云わねぇよ」

青鯖…こと太宰治は書類に目を通していた。────様に見えた。書類だと思っていた紙は【完全自殺読本】を全て丁寧に印刷したもので、廻りの人間を欺く為だけに紙を無駄遣いしたのである。
全く、包帯無駄遣い装置の次は紙無駄遣い装置なのか。此奴は世の中に所狭しと生えている木を一体どれ程無駄にすれば気が済むのだろうか、今は地球温暖化が問題だろう、と中原中也は呆れた。因みに包帯無駄遣い装置と云う呼び名は太宰の所属する武装探偵社の調査員、国木田独歩がつけた呼び名である。
今、三組織異能力戦争の只中。
首領の命令で嘗ての相棒である太宰と組むことになった中也は、呆れた様子で待ち合わせの喫茶店の椅子に腰掛ける。やって来た給仕に珈琲を注文し、太宰と2人で作戦を立てる。

丁度話が切れ、冷めきって仕舞っている珈琲に口を付ける。

「ねぇ中也」

同じく冷めきって仕舞っているであろう紅茶を飲んでいる太宰に話し掛けられる。
「あ?ンだよ」

「中也の家、行ってもいいかい?」

「…!」

此の双黒と呼ばれた二人には秘密があった。二人は所謂恋仲であったのだ。────四年前迄は。
中也は太宰の言葉に心底驚いた。この四年間音沙汰無しだったのだ。太宰がポートマフィアを抜けてから、ただの1度も連絡は無かった。いくら自分が思い続けたところで叶わないと諦めようとした矢先に、遊撃隊の芥川から報告が上がった。
────太宰さんは、武装探偵社へ入社している様です。────
諦めきれずに浮遊していた想いがストンと足を下ろしたように静まった。然しそれと同時に新たに今迄抱えていた気持ちとは比べ物にならないほど、太宰への気持ちは膨らんだ。
────此奴を、もう1度俺のモノに…
堪らなく嬉しい。二つ返事で承諾した。

「ああ。いいぜ」


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