サバイバーに裏切られたのでハンターになって復讐しようと思う。
第31章 試合★
いやはやしかし。
こうして歩いてみると、確かに足が遅くなったのを実感する。
私は一応強化されたって事になってるけど。
「私からしたらただ自分の体が扱いにくくなっただけだな。」
その時。
スチャ、と不思議なおとが聞こえた。
前を見ると、磁石を構えているノートンの姿が目に入った。
『全身打撲に気をつけて。』
どうしよう、本当に全身打撲しそうで怖い。
「はっ。お前はハンターになっても意気地無しのままだな」
「あ"?」
さすがに包容力の広いこのアンジュ夏葉様でも、この一言は許せませんよ?(アンジュ=フランス語で天使)
「痛い目見してやんよ」
唯一私に残された身体強化という人格を発動させる。
これは、攻撃範囲がかなり狭まるけれど足の速さは元通りになって、刀拭き(攻撃硬直)もかなり短くなるというものだ。
伊達に通り魔(?)やってねぇから!攻撃範囲が狭いなんて敵でもねぇ!
「……?」
急に固まった私を見て戦意喪失したと勘違いしたノートンは解読に戻った。
身体強化をかけるのに必要な時間は約20秒。存在感がたまると、最短で3秒。
最初にかけた方がよっぽど楽だ。追いかける時間が勿体無い。
「っ!?」
身体強化を終えて急に動き出した私を驚いたように見るノートン。
「逃げなかったお前はただのバカだ。この脳無しが」
呆気にとられるノートンを一発殴る。ここでやっと正気に戻って逃げようとしたようだが、間に合わずにもう一発。
「無様だねww」
「ぐっ……」
近くで通知が鳴る。庭師が椅子を壊しでもしたのだろう。
「意味のない事だ。行くよ、ノートン」
ノートンの服を釣り針の様な形をした鋭いフックに引っかけて引きずる。
残念ながら、私はあの風船を使えないんだ。
大人の事情らしい。きっと、私の元が普通の人間だからだろう。
「離せっ!!俺に触るな!!」
必死に抵抗するノートン。逃がすまい、とフックを持つ手に力を込める。
「ふぅ、やっと椅子。」
ノートンを椅子に座らせ、鼻に全神経を集中させる。
サバイバーたちの匂いをかぎ分けるためだ。
酒の臭い。
近くに、デミがいる。
「ノートン!助けに来たよ!一緒に逃げよう!」
さぁ、やっと楽しい狩りの時間だ。