第9章 【溢れ返ってきたヨッパライ】
前話からの酒宴は続く。
「あ~~飲み明かすのって『日本の伝統』って感じするな~」
「因習ですよ。ホラホラ主役のさんも寝てしまったことですし、帰りたい人は帰りなさい」
パンパンと手を叩いて獄卒たちに呼びかける。
「今帰らないと大王の自伝語りが始まりますよ」
「帰るぞォォォォタイミング作ってくれてありがとう鬼灯様!」
物凄い勢いで帰っていく獄卒たちを見ながら鬼灯が呟く。
「…叫喚地獄の亡者共と同じですよ、これじゃあ」
「叫喚地獄?」
酔って頭痛でもしていたのか横になっていた桃太郎が起き上がりながら問う。
「まァ平たく言うと酒乱の堕ちる地獄です。酒乱の巣窟でしてね……」
その時ーーガラッと店の扉を開けて一人の獄卒が入ってきた。
「あっ!いた!!大王!鬼灯様!!叫喚地獄の亡者共が雑用係・八岐大蛇の持っていた酒を奪いました!!!」
「どういうことですか!せっかく更生施設(叫喚地獄)でリハビリ(禁酒)をしていたというのに!」
「亡者リハビリやってんの?」
「そして八岐大蛇は雑用やってんだ……」
酒や果物を飲み食いしていた白澤と桃太郎の二人が的確なツッコミをいれる。
「鬼灯君ワシも行くよ!」
「大王はどうぞ、ここにいてください。上司(ボス)は会議室にいていいのです。事件が起こっている現場には部下(私)が行きます」
「鬼灯君……カッコよく言ってるけど要するに厄介払い!?」
「うん目立つし邪魔!!!」
そう言って走り出していってしまう鬼灯の背に桃太郎が声をかける。
「何か手伝いましょうか?」
「あそこの亡者はとにかくタチが悪い!危険ですからついて来なくていいですよ」
店を飛び出ていった鬼灯に対し、まだ酒をあおっていた白澤が桃太郎に笑いかける。
「…そう言われると行きたくなるよね」