第8章 【酒と女でダメになる究極の例】
「…我不喝(飲みません)」
うさぎ漢方、極楽満月。
白澤が営んでいるこの店では今日も桃太郎がせかせかと働いていた。
肝心の白澤はぐったりとした顔でトイレに引きこもっている。
完全に二日酔いである。
「我以後不喝酒(ワタシはもう飲みません)清原涼我(お許しください)我不喝我不喝」
「毎回懲りずによく飲みますよね。昨日は紹興酒と養命酒をチャンポンしてました。養命してないよね」
フラフラになりながらトイレから出て来た白澤に向かって桃太郎が言う。
「しょうがないじゃん……ちゃんが衆合地獄管理してたのは知ってたけど、花街にお店持ってるとは思わなくてさ……嬉しくてつい…………っ!」
慌ててトイレに駆け込む白澤。
そしてすぐ聞こえた嘔吐音。
どうやら相当具合が悪いようで桃太郎に黄連湯を頼んでからアイスノンを頭に横になってしまう。
「…桃タロー君、今日は休もう……」
「全く…これじゃあ鬼灯さんにとやかく言われても言い返せないッスよ」
「アイツは鬼だよ?ウワバミだよ」
「じゃあ、一つ負けてますね」
“負けてる”という言葉に反応して白澤が勢いよく起き上がる。
「まだイケるよ迎え酒だ!ちゃんの店まで飲みに行く!!」
「ハァ!?近所に天国名物『飲兵衛が一度は夢見る滝』があるじゃないスか!」
「あそこにはちゃんいない!それに言ってもあれ大吟醸オンリーじゃん。もっと色んなのをちょこっとずつ楽しみたい」
「女子かッッ!真の飲兵衛はひたすら清酒を何合も仰ぐわッッ」