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名もない物語

第6章 【ニャパラッチ】


ー大釜ー

「ハア~!」

「新卒の実習は大体ここで…」

「あっ猫又?」

わあ可愛い、と言いながら閻魔大王が近づいてくる。

風呂でも入っていたのか首からタオルを下げていた。

「あっほら閻魔大王ですよ。あちらを取材しなさい」

「鬼灯様と様がいいんですってば」

「あ、その子記者なの?」

「何かいいネタあげてください」

「この前、奪衣婆が『一回綺麗なヌー.ドを撮ってみたい』って」

「何で揃いも揃って老婆の裸に積極的なんだよ」

「毎日ここへ来てサウナがわりにして…5時きっかりに裸のまま水がめにダイブするから……正直困ってる」

「そんなん、わっちに相談されても……」

「説明続けますよ。ここの釜は皆古く、多くが付喪神に……この先は屎泥処といって……」

ぱか、と懐中時計を開いて鬼灯が説明を終える。


「さあ、普段は公開しない釜の説明までしましたよ。十分記事になるでしょう」

「ええっ!?鬼灯様や香純様についてもっと詳しく……」

「ダメです」

――参ったな、こりゃ思ったよりガードがかてェぞ。〆切もギリだし今回は普通の記事で……

「じゃ最後にお願い!やっぱり写真がねーと華がねーんスよ。ここをバックに一枚だけでいいんで!」

「…仕方ないですね、一枚だけですよ。いいですね」

「やった!承知ッス!」

「……ハイ!今!撮ってください」

「!?ハイッ!じゃ撮りますよー」


パシャ、と撮れた写真に写っていたのは――

水がめにダイブする奪衣婆だった。
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