第25章 ルカ編
~ルカside~
全く。この子は本当に女性としての自覚があるのか。
「るかぁ、抱っこー」
「はいはい」
彼女を抱き上げる。
酔っているからか、体が温かい。
「もうこのまんま寝ちゃいな」
「う~…ルカ、どこもいかない?」
不安そうに、抱き締める力を強くする夏葉。
「何処にも行かないよ。大丈夫」
「んん…おやすみ~……」
体をの力をこちらに委ね、気持ち良さそうに眠り始める夏葉。
「おやすみ、夏葉」
優しく頭を撫で、夏葉の部屋まで向かう。
……ついたけど、ドア開けて良いのかな。仮にも女性の部屋だ。
ええい、面倒くさい。自分の部屋に連れていくか。
「囚人じゃないか。なんだ、それは?」
弁護士のフレディに声をかけられ、夏葉をくるんだ毛布を指差される。
こんなやつに夏葉のかわいい寝顔は見せたくないし、この毛布を取ったら起きてしまうだろう。
「あぁ…こんばんは。すみません、急いでいるので」
「おい!怪しいな、見せろ!」
無理矢理毛布を掴もうとしてきたフレディを避け、バランスを崩した隙を狙って足をかける。
「ぐはぁっ!?」
「…うるせえな。夏葉が寝てんだから静かにしろよ」
「…るか、なあに?」
ああ、起きてしまった。
「ううん、何でもないよ。行こうか」
出来るだけ柔らかい声で言う。
夏葉も、安心しきったように、また眠る。
良かった、寝てくれて。
「クッソ!」
後ろから何かがとんでくる音がし、右に避ける。
案の定、石がとんできていた。
何処の石だこれ。
「…フレディ?弁護士なら分かるだろう?
今の石が当たっていたら、刑法204条の傷害罪に該当するよ。いや、当たり所が悪ければ、刑法199だっけ?の殺人未遂に値するよ?
…弁護士なのに、そんな簡単な事も分からないの?」
「ここでは常識なんて通用しない。人を殺しても平気だ」