第13章 三角関係
「あ、ナワーブ。お前も来たんだ。」
「イライとなにしてんの?」
「いや、なんもやってない。ただイライが寝ただけ。」
ナワーブが少し悔しそうな顔で、「ならいーけど。」と言った。
「夏葉。」
名前を呼ばれたので顔を上げる。すると、ナワーブの顔が至近距離にあった。
「わ、近…んぅ………」
深い深い、脳が蕩けるように甘いキスをされる。不思議と抗う気持ちにはならなかった。
ナワーブの唇が、自分の唇から離れたとき、少し寂しさを感じた。
「……ごめん、いきなりキスしたりして。」
私は謝罪を無視して、「もっかい今のキスして。」とナワーブに言った。ナワーブは少し驚いたような表情こそしたが、なにも言わずにただ静かに再度唇を重ねた。そして、優しいような激しいような、心地のいいキスをしてくれた。
私は別に、行動の一つ一つに意味などを感じていないし、考えもしないのだ。けれど、今回ばかりは考えた方がいいなとは少し後悔した。
「……?夏葉?とナワーブ。…なにしてんの」
あ、イライが膝に乗ってんの忘れてた。
「キス。」
あまり意味を感じさせないように、明るくも暗くもない、真面目でもないような口調で言った。つまりは、当たり前のような口調で言った。
「へぇ。ナワーブとはもうそんな仲なんだ?」
「ち、違う!」
イライが嫉妬したように言うので慌てて否定する。私とナワーブが?さすがに展開が早すぎる!
「違うんだ…。だったら、私ともキスできるね?」
「え!?」
イライは、私の太ももから起き上がり、立ち上がった。そして、世間でいう顎クイをして、激しく私の唇を奪った。
「ふ、ぁ…んぅ………」
イライのキスはナワーブとは違って、独占的な深く長いキスだった。
息が辛くなってイライの胸元を叩くまで、止めるつもりはなかったようだ。
「イライとのキスと俺とのキスどっちの方がよかった?」
そうナワーブが聞いてくる。正直どちらも気持ちよかった。比較出来る程の差はない。
「ん~……どっちも同じくらいかな。」
私がそういうと、イライとナワーブはこう言った。
「へぇ。じゃあ、いつか私だけにしてみせるよ。」
「あ?夏葉は、俺のモンにすっから。そのツラ歪ませてやるよ、イライ。」
あれ、なんかスイッチ押しちゃったみたいだ。どうしよう。