第7章 夕方。
「おーい、夏葉ー。ご飯の時間だよー。行こう。」
夏葉をいくら呼んでも反応が無い。眠っているのだろうか。それとも、どこかに行っているのだろうか。
鍵がかかっているか否かの確認をしてみる。ノブはあっさりと動き、当たり前の様に扉が開く。
「夏葉、入るよ。」
夏葉に呼びかけても反応がない。ベッドの方を見てみると、そこには気持ち良さそうに眠る夏葉がいた。
私は優しく夏葉の肩を揺らした。そして、耳元で囁くように、「起きて。」と言ってみた。
「んん……あれ、イライ?」
「おはよう。ご飯の時間だよ。一緒に行こう。」
「分かったぁ……イライ、おんぶ……眠い…」
夏葉が両手を広げておねだりしてくる。
「ええ……背中で寝ないでね?ご飯食べて、お風呂入ってから寝ること。」
うつらうつらしながら頷く夏葉は天使の子かと思うほどに可愛らしかった。
「ほら、おいで。」
私がそう言うと、夏葉が背中に乗ってきた。可愛い。そして、暖かい。
「行くよ。」
「うん……」
うん、可愛い。
食堂に向かって歩いていたら、途中でナワーブに会った。
「よぉイライと夏葉。お前らも食堂行くのか?」
「ああ。一緒に行かないか?」
「もちろんー」
「ナワーブぅ…今日イライとナワーブと私でお泊まり会だよぉー。」
夏葉の言葉を聞いて、ナワーブは「また随分と急だな。まあ空いてるから良いけど。」と笑っていた。
「ほら、夏葉。食堂着いたよ。歩いて。」
夏葉を地面に下ろすと、私とナワーブの手を握ってきた。まだ起きたばかりだから、暖かい。
「なんか、夏葉子供みてぇだな。俺が父さんでイライ母さんな。」
「別にいいけど……君と私は性行為をして、私が出産することになるぞ?」
「やっぱやめるわ」
実に下らない談笑をしながら三人でご飯を食べた。今日の夕食はスパゲッティで、私はナポリタンを、ナワーブはミートソースを。夏葉はカルボナーラを食べた。こうしてみてみると、人の好みはやはり違うものだなと思った。