第75章 静かな時
お菓子を食べた後、皆で竈門家のお墓へ向かう。
光希の両親を知る竈門兄妹だけでいいといったのだが、善逸と伊之助も付いてきた。
「如月家のお墓はね、無いの」
歩きながら、光希が隣の炭治郎に言った。
「無い……?」
「うん。母様の日記でわかった。お墓そのものが存在しない。通りで見付からなかったわけだよ。如月の者は血が特殊だから、基本的には髪の毛一本すら残さずに焼かれて、骨もどこかに隠して埋めてたみたい」
「鬼に見つからないように……か」
「うん」
お墓への道のりを、話しながら歩く。
「たまに……竈門家から嫁いだ者が、竈門家のお墓に入れてもらえることがあるみたいでね。だから、父様と母様は、叔父様のご厚意でここに入れてもらえてんだと思う」
「うちの父さんと叔母さん、仲良し兄妹だったもんな」
「うん。それでも、如月を墓に入れるのは危険もあるだろうに……。感謝してる」
木々を掻き分けた先、山の奥に大きなお墓が見えた。
「これだよ」
「わぁ、立派なお墓……」
確かに、こちらの墓も明らかに隠されていた。以前『俺の案内がないと辿り着けない』と炭治郎が言ったが、本当にその通りだった。
光希は持ってきたもう一つの花束をお墓に供える。
………やっと来れた
墓の前に座って手を合わせる。
炭治郎と禰豆子、善逸と伊之助も、静かに座って手を合わせてくれた。
「炭治郎、ありがとう。皆もありがとうね」
「いや。案内出来てよかった」
「お姉ちゃん、大丈夫……?」
「禰豆子もありがと。大丈夫だよ」
光希は禰豆子の頭を撫でる。
「炭治郎、私……少しここに居てもいい?」
「家まで戻れるか?」
「うん、一人で戻れるよ」
「………わかった。一時間経っても戻らなかったら鴉に探させるから」
「あはは、遭難しないって」
炭治郎と禰豆子、伊之助は家へと戻っていった。
善逸は、静かにその場に留まる。しかし、一人になりたいのだろうと思い、そっと姿を消した。