第75章 静かな時
光希は両手、炭治郎は片手で、二人並んで手を合わせる。
静かな時間が流れた。
「叔母様と竹ちゃん……ここにいるんだね」
「うん」
目を開いた光希が言う。
「下の子たちの名前は?」
「花子、茂、六太」
「あの竹ちゃんも、お兄ちゃんだったんだね」
「光希が知ってるのは赤子の竹雄だもんな。大きくなったら、ちょっとだけ生意気になったよ」
「そうなんだ。花子ちゃんたちはどんな子だったの?」
「花子はおませさん。茂と六太は甘えん坊だったよ」
「……会いたかったなぁ」
「うん」
「絶対にいい子たちだもん」
「…………うん」
「きっとみんな、炭治郎や禰豆子に似てて……優しくて……可愛いくて…………私とも仲良くしてくれたかなぁ……」
「うん……遊んでやって…ほしかったなぁ……」
二人の目から涙が溢れる。
炭治郎が、震える光希の肩を右腕で抱き寄せた。
「炭治郎を守ってくれて、ありがとうございました。……どうか安らかにお眠りください」
光希は涙を流しながら、お墓に向って頭を下げた。
「……光希、ありがとう。……ありがとう」
「うん……」
光希は手ぬぐいで涙を拭く。
「はぁ……俺、もう凄く泣いたのに、まだこんなにも涙出るんだな。情けない」
「情けなくないよ。まだまだ泣き足りないくらいでしょ」
「でも俺、兄ちゃんなのに」
「兄ちゃんだから、だよ」
光希は手ぬぐいで炭治郎の涙も拭いてやる。
「じ、自分で拭けるよ!」
「ふふふ、兄ちゃんもたまには甘えなさい」
「……皆に笑われるだろっ」
炭治郎は顔を赤くして、光希の手から手ぬぐいを取って自分で涙を拭いた。