第10章 想い
夕方頃、光希は冨岡邸に着いた。
「只今戻りました」
声をかけて屋敷に入る。
「光希ちゃん、おかえりなさい」
笑顔の千代が迎えてくれる。
「ただいま。千代さん」
「あら?何かいいことあったの?」
「え?」
「何か嬉しそう。ふふふ」
千代の洞察力に驚く光希。そして、そこまで顔に出てるのか、と少し焦る。
「うん、ちょっとね。後で話し聞いて」
「わかったわ。もうすぐ夕飯よ。着替えてらっしゃい。お湯持ってってあげる」
「うん。ありがと」
光希は自室へ行く。
千代が持ってきたお湯で、身体を拭く。
着替えが終わった後、今日の事をいろいろ思い出しながら部屋でぼーっとしていると、夕飯だと声がかかる。
義勇の部屋に行く。
いつも通り、共に食事をとる。
「誤解は解けたのか」
義勇が食べながらそう聞いてきた。
一応気にしてたんだな、と思う。
「はい。話せました。蝶屋敷へ行かせてくださりありがとうございます」
「そうか」
「で、ですね……」
義勇には言わねばならない。善逸と約束した。でも、どうやって言ったらいいものか…
気恥ずかしいというか、柄じゃないなと思う。
「その……」
「…………」
言いにくい!これ、めちゃめちゃ言いにくい!!吐きそうだ!!!
義勇はじっと光希を見つめた。
「……炭治郎か?」
「え?」
「お前の相手だ」
「相手…?あ、いや、炭治郎じゃないです」
「違うのか」
何かを察した義勇が言葉を発したが、義勇は光希の相手を炭治郎だと思っていたようだ。
「あの、我妻善逸という男です。義勇さんはご存知ないかと……」
「我妻……」
「黄色い頭で、ちょっと間抜けな顔の」
「ああ、見たことはある」
酷い言われようの善逸。
これで合点がいく義勇も義勇だ。
「そ、その我妻と、……一応、こ、恋仲になるという話しで今日まとまりました…」
―――恥ずかしっ!すんげえ恥ずかしっ!
顔を赤くしてそれだけをやっと報告する光希。
語尾はほとんど消えていた。
「そうか。良かったな」
義勇は無表情のままそう言った。
少しホッとする光希。これで善逸との約束は果たした。
鬼と戦うより汗かいたわ、と光希は思った。