第10章 想い
黙々とご飯を食べる二人。
光希は恥ずかしいやら気まずいやらで動揺が見えるが、義勇はいつも通りだ。
「我妻は……」
義勇の声に、顔を上げる光希。
「俺を刺すような視線で見ていた」
「そうなんですか?あいつ…叱っておきます」
「あれは、お前を想っていたからなんだな」
義勇は目を少し細める。
「大切にしてもらえ」
「……はい」
食べ終わると、お茶を飲みながら義勇が言った。
「蝶屋敷に戻るか?」
「えっ?何故ですか?」
「我妻と共に居たいだろう」
義勇は光希を見ないまま湯呑を置いた。
「お前は継子ではない。俺主体の修行も終わっている。ここを出たいなら……」
「嫌です!」
光希は叫ぶように言った。
「出てけ、と言われるなら仕方ありません。邪魔になったならそう言ってください。でもそうじゃないなら俺はここに居たいです」
「だが……」
「まだまだ俺はここで強くなりたい」
「………」
「それに、恋人が出来たからって、全部がそれに一色になるなんて俺は嫌です」
「………」
「いつも一緒に居たいとか、ちっとも思わないんですよ俺。たまにでいいんです、本当に」
善逸が聞いていたら、酷い!とまた大泣きしただろう。ずっと黙っていた義勇も、善逸を哀れんだ。
いつ死ぬかわからない仕事をしているだけに、少しでも側に置いてやった方が…という義勇の親心は見事に粉砕された。
「我妻は嫌がらないのか」
「それは……」
「それでもお前はここに居たいのか」
「はい!……ここに居てもいいですか?」
女子からぬ思考を持つ少女が、恐る恐る聞いてくる。
「俺は構わない。好きにしろ」
義勇が無表情で答えると少女は「良かった」と笑った。
その後、千代にも報告する。
照れくさいのは変わらないが、義勇の時よりよほど楽に話すことができた。
しかし……
「善逸くん、ね……」と厳しい顔をする千代。
今まで光希の話に散々登場してきた善逸は良いところなしだったからだ。
「なんで善逸くんなのよー。話聞いてると絶対炭治郎くんのがいいじゃない」
千代といい義勇といい、やたら炭治郎の名前を出す。自分は炭治郎が好きだったのか?と錯覚を起こす程だった。
光希は千代に、善逸は案外良い奴なんだよ、と笑いながら説明をした。