第74章 最後の仕事
「褒賞金獲得者の列記に、光希の名前がないのは何故だ」
「私は要りません」
「しかし功績からいけば光希が……」
「必要ありませんので辞退致します」
納得していない輝利哉に笑いかける光希。
「私にはもう、次にやりたいことがあるんです。新事業といいますか。ちゃんと自分で稼いでみせますよ」
義勇も驚く。聞いたことがない話だった。
「それを始めるにあたって、もし支度金が足りなかったら少々借りるかもしれません。でも、必ず耳を揃えて返しますから」
「新事業……」
「はい、だから私への心配は無用です」
「でも……」
「……いいか、輝利哉」
彼女は低めの声で話しかけた。
口元はにやりと笑っている。
「賢い人間っつーのはな、どこでどうやっても生きていけるんだよ。思考力があればどんな道でも切り開ける。だから考えることが大切なんだ。いつも言ってきたな?常に次の手を考えて動くんだ。覚えておけ」
「はい。わかりました、先生」
「……つまり、俺たちは賢くないから生活保証がないと生きていけないということか」
「言われてんぞォ、冨岡ァ」
「そんなこと言ってないでしょ!あなた方は普通。私が賢すぎるだけですよ」
最後の柱合会議は、和やかに進んでいった。
「鬼殺隊は……今日で解散する」
輝利哉が静かに述べ、光希、義勇、不死川は「御意」と答える。
「長きに渡り身命を賭して」
「世の為人の為に戦って戴き、尽くして戴いたこと」
「産屋敷一族一同、心より感謝申し上げます」
輝利哉達が深々と頭を下げたので、義勇と不死川は顔をあげるよう声をかける。
「鬼殺隊が鬼殺隊で在れたのは、産屋敷家の尽力が第一!」
「輝利哉様が立派に務めを果たされたこと、御父上含め産屋敷家ご先祖の皆様も、誇りに思っておられることでしょう」
二人の言葉に、輝利哉たちが涙を流した。