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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第74章 最後の仕事


戦いから三ヶ月が経った。
光希は義勇や不死川と共に後始末という名の仕事をし、それはようやく終わりを迎えた。

光希は仕事をこなしながら、善逸と会ったり、義勇や不死川と将棋を指したり、生家に帰ったりして、忙しい中でも楽しく過ごしていた。

今日は最後の柱合会議だ。
この日、光希は久しぶりに隊服を着た。
赤い釦を上からゆっくり三つ留める。手が震え、動悸が激しくなり、呼吸が上手く出来ない。やはりこの服を着るのはどうしようもなく辛い。何度も深呼吸して、心を落ち着かせていく。

薄紫色の羽織は鴉と共に埋めてしまったので、適当な厚手の羽織を着た。羽織で隠しているが、肩にこっそりと日輪刀から外した水色の記章を付けている。


「……行けるか、光希」

部屋の外から義勇が声をかけた。

「はい」

光希は立ち上がって部屋を出た。


長閑な春の午前中。
産屋敷邸まで義勇と並んで歩く。

「大丈夫か」
「予想以上にしんどいです」
「隊服じゃなくてもいいんだぞ」
「いや、駄目でしょ」
「戻って着替えるか」
「……いえ。最後なので、これで」

義勇はもう、しっかりしろとは言わない。
彼女に逃げ道を作ってくれる。

「最後まで心配かけてるってどうなのよ」

光希は苦笑いをする。

「弟子の心配をするのは、師の誉れだ」
「……誰の言葉ですか」
「俺だ」
「おっと、驚きの展開です」

冗談を言いながら歩いていると、不死川と出会う。

「よォ」
「お疲れ様です」

三人は並んで歩く。

「鰻日和ですねぇ」
「…………」
「…………」

「会議の後、ちゃんとご飯行くんですよ?」
「わかってらァ」
「お金は義勇さんに渡してありますから」
「小銭で払うのかよォ?」
「まさか。ちゃんと両替済みですよ。私を誰だと思ってんの」
「………チッ」

「これを機に、仲良しになってくださいね」
「飯行くだけだァ。そこまでの保証はしねェ」
「馳走になる、不死川」
「足りなかったらお前が払えよ、冨岡ァ」

光希を真ん中にして、男二人が話す。会話が頭上で飛び交っている。
間に挟まれながら、光希は満足そうに笑った。

辛かった心が少し和らいだ。


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