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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第74章 最後の仕事


「光希」
「ん?」
「俺、もう歩けるよ」
「? 良かったね」
「だからさ。今度、街に行こうよ。二人で。ね?」

善逸は光希をデートに誘う。

「うーん……」
「何?嫌なの?」
「日にちを合わせられない。私、連絡手段がないから」

「あ。そっか。じゃあ、明日!」
「仕事」
「明後日!」
「仕事」
「ぐうぅ……!じゃあ、明々後日!」
「会議」

「やだもう!光希俺の事、全然好きじゃないじゃん!!酷い!酷いよじいちゃん!光希が冷たい!!」

善逸が慈悟郎の遺骨に話しかける。

「慈悟郎様に告げ口しないの。困ってらっしゃるよ」
「ふんっ!!」
「……拗ねてると、四日後に逢えないよ?」
「え?」
「四日後なら大丈夫。たぶん」
「本当?」
「たぶん!たぶんだからね?」
「街行ける?」
「うん」
「やったー!!じいちゃん!聞いた?聞いたよね?証人になってね!!」

今度は飛び上がって喜ぶ善逸に、光希も笑う。

「じゃあ、お昼頃に街の入り口ね」
「え、冨岡さん家まで迎えに行くよ?」
「いいよ来なくて」
「行くって」
「だって……なんか、恥ずかしいじゃん。母ちゃんとかいるし、見られるのちょっと……勘弁」

光希が頬を染めて俯く。

「うわー……めっちゃ可愛いんですけど」
「…………」
「よし、絶対迎えに行こ」
「絶対来ないで!」
「あははは」

プイッと顔を背ける光希。
髪の毛がふわりと動いた。

「髪留め買ってあげるよ」

善逸が光希の髪に手を伸ばす。

「まだ縛れない」
「うん。でも、買ってあげる」

善逸は髪から光希の頬に手を移動させ、両手を添えて自分の方に向かせる。

「光希が欲しいなら、櫛でもいいよ」
「……意味わかってんの?」
「勿論。でもまだ受け取ってくれないでしょ?」
「……そうね」
「じゃあやっぱり髪留め。櫛に繋げるための予約ってことで」

善逸が光希に唇を寄せる。

「慈悟郎様がいらっしゃるよ」
「ん?じいちゃん、ちょっとあっち向いてて」
「もう……、馬鹿」

光希は呆れながら、そっと目を閉じる。

「……ありがとう、光希」

善逸はそう囁いて、優しく口付けをした。


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