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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第74章 最後の仕事


一週間後。

「じゃあ、行ってきます」
「ああ」

荷物を背負った光希が、玄関で義勇に声をかける。

「日暮れまでには帰ります」
「わかった。気をつけて行け」
「はい」

光希は荷物を持って、蝶屋敷へと向かう。
冨岡邸を出ると、一気に表情が暗くなる。気持ちが沈んでいるのは、寒さのせいだけではない。

身体もほとんど回復し走っていけるのだが、思うように足が進まない。
久しぶりに善逸に会いに行くというのに、気持ちはどんよりとしていた。


蝶屋敷に付くと、皆が出迎えてくれた。
炭治郎も歩けるようになっており、ほっとした。伊之助も元気に飛び跳ねて光希の訪問を喜んだ。

光希が使っていた部屋は誰も入院していなかったので、使っていいとアオイに言われた。
善逸はリハビリ中だったので、部屋で少し待つ。

背負っていた荷物を机に下ろし、風呂敷をそっと撫でる。すると、部屋の扉が開いた。


「光希!!」

善逸が部屋に飛び込んでくる。

「会いたかったよ!」

にこにこ笑顔で抱きついてくる。

「善逸、久しぶり。元気?」
「放ったらかされ過ぎて、全然元気じゃない」
「……ふふ、元気そうだね。良かった」

光希は善逸の背中をポンと叩く。

「光希は元気じゃないね。どうしたの?」

善逸は光希の身体を少し離して、顔を覗き込む。

「ん。ちょっとね」

悲しそうな顔で笑う光希。

「今日は俺に用があって来たんだよね?」
「うん」
「何?」
「……うん」
「もしかして、しんどいこと?」
「そうだね」
「ちょ、ちょっと待って!え、何?」
「…………」

善逸は光希を離して、考え始める。

「は!まさか、冨岡さんと……」
「え?」
「冨岡さんと結婚します……とか?」
「…………」
「そうなの?ねえ、そうなの?俺がしんどいことってそれじゃん!そういう感じのやつじゃないの?ねえ!!」

騒ぎ出す善逸に、苦笑いをする光希。

「全然違うわ」

光希は善逸を椅子に座らせて、自分は彼の前に膝を付いて床に座る。

「光希?」

善逸が首を傾げながら光希を見下ろす。
光希は善逸の手をぎゅっと両手で握ってゆっくりと話しかける。

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