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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第74章 最後の仕事


二月になり、仕事もだいぶ終わりが見えてきた。

「よし、今日はこんなところかな」

光希は書類を纏めて紐で縛る。

「んじゃ俺は帰るぜェ」
「あれ?泊まっていかないの?実弥さん」
「今日は帰るわァ」
「もう遅いぞ」
「馬鹿か冨岡ァ。ガキじゃねえんだ、平気だァ」

「はい、馬鹿って言った!罰金です!」
「あ、こらテメェ!」

光希は『さねみ』と書かれた財布から小銭を出して缶に入れる。

「溜まってきたよー、ひひひ」
「クソがっ!」

これは義勇と不死川の仲が悪すぎる為に光希が提案したもので、不死川が義勇に酷いことを言った際にはこうして罰金が課される。

『ぎゆう』と書かれた財布もあり、義勇が不死川に酷いことを言った時にはそこから罰金が引かれる。が、この財布から金が減ることはほとんどなかった。

缶にお金が溜まったら男二人で食事に行くことになっている。不死川にとっては恐怖でしかない。

「たった二人の柱なんだから、仲良くしてよ」
「なんでだァ!俺はこいつがっ……!」
「ん?こいつが何かな?」

光希は『さねみ』財布をちらつかせる。

「……っ、なんでもねえッ!!」
「あははは!実弥さん、可愛すぎでしょ!!」

笑い転げる光希。


「帰る」

不死川が不機嫌そうに立ち上がり、部屋から出ていく。

「あ、実弥さん。待って!」

玄関で光希が呼び止める。

「……んだよォ」
「お金、追加してって」

にこりと笑って『さねみ』財布を出すと、「チッ」と言いながらも懐から自分の財布を取り出す。大人しく『さねみ』財布に小銭を追加する不死川。

「こりゃ、お二人の食事は実弥さんの奢りってことになりますなぁ」
「…………」
「楽しみですね、ふふふ」

「……そん時は、テメェも来い。そんなら飯くらい行ってやるわァ」
「は?行くわけないでしょ。二人が仲良くならなきゃいけないのに。馬鹿なの?」
「テメェ……それ罰金だろがァ」
「私はいいの。だって私はもう、義勇さんとも実弥さんとも仲良しだもん。ね?」
「……チッ」

義勇も玄関に来る。

「気をつけて帰れ」
「……おォ」

不死川は振り向かずに去っていった。

「ここはやっぱり鰻ですかね?」
「鰻にするならまだ足りないな」

不死川を見送りながら、光希と義勇は笑った。

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