第74章 最後の仕事
冨岡邸までの道のり。
光希は連れてる二人と打ち合わせをしながら歩く。人に出会わない道を選んで屋敷を目指す。
「母ちゃん!!!」
「光希!!無事で良かった……!」
帰ってきた光希を、千代がひしっと抱きしめた。光希も千代に抱きつく。
「身体は大丈夫なの?」
「うん、だいぶ良くなったよ。あとは右腕だけ」
「そうなのね。ああ生きててくれて本当によかった。ここでしっかり治しなさいね」
千代は目に涙を浮かべて、何度も何度も光希の頭を撫でた。
光希は屋敷に上がると、村田と竹内を連れて義勇に挨拶をしに行く。
「義勇さん、入ってもよろしいですか」
「ああ」
スッと扉を開けて義勇の部屋に入る。そこには短髪になった義勇が居た。
義勇は寝ておらず、座椅子に座って本を読んでいた。片腕なので、片膝を立ててそこに本を置いている。義勇は顔を上げて本を閉じた。
「ご無沙汰しております。お加減はいかがでしょうか」
「問題ない。お前はどうだ」
「体力、右腕共に四割……、あ」
ついいつものように回復状況を伝えてしまい、途中で気がつく。
「もういいんでした。あはは」
「無事なら、いい」
光希が笑うと、義勇もうっすらと笑った。
「!!」
義勇が微笑んだことに、光希をはじめ三人が驚く。
「なんだ」
「い、いえ……なんか雰囲気変わりましたね、義勇さん」
「千代もそう言うが、俺にはわからん」
「お気になさらず。私も皆から変わったと言われております。きっと、そういうものなのでしょう」
「確かにお前も変わったな」
「そのようです。なにはともあれ、義勇さんがご無事でよかったです。これからしばらくお世話になります」
光希はスッと頭を下げる。
村田と竹内も義勇に挨拶をする。
「とりあえず部屋でゆっくりしろ」
「はい」
光希は自室へ下がり、荷物を解いていく。村田と竹内も与えられた部屋に行く。
光希は休憩もそこそこに、着物のまま稽古場へ行った。
入る前に深くお辞儀をして、道場の隅に座って瞑想を始める。
しばらくすると義勇の気配がした。
「お前はここが好きだな」
光希はゆっくりと目を開く。