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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第74章 最後の仕事


「……なんで?」
「ここで政務をするのはよくないって思ってね。重症の隊士もいる中、私のせいで人の出入りが多くなり過ぎてる」
「なんで冨岡さんの家なの?」
「柱の生き残りは義勇さんと実弥さんでしょ。私が義勇さん家にいれば、実弥さんが来てくれれば皆で話し合いが出来る。私、鴉いないから連絡とりにくいんだよね」
「…………」
「人が一人減ると、アオイさんたちの負担も減るし」

「俺との時間も減る。つーか、無くなる」

善逸が俯いて呟く。

「そうなるね」
「……また冨岡さんのところへ行くのか。お前はいつもいつも」
「あそこには母ちゃんも居る。ずっと私を心配してくれてるの。私にとって、大事な場所だよ」
「…………」

「療養が終わって仕事も片付いたら、ちゃんと義勇さん家を出るから」
「冨岡さんの嫁になっちゃわない?」
「あはは。ならない、ならない」
「家出たら、どこに行くの?」
「…………」
「帰ってきてよ、隠れ家に」
「私は、私の家に帰る」

「……また、別々の生活になるのか」
「うん」
「俺たちは、ずっとそうだな」
「本当だね。子どもの頃、ずっと一緒にいた反動かな」
「……お前は平気そう」
「そんなことないよ」

光希は善逸の頭にポンと手を置く。

「私も寂しいよ。でもね、ちゃんとやりたいの。最後まで。私は今、戦死者の身元調査をしてる。勿論一人じゃ無理だし、手伝ってもらってるけどね」

「一番しんどいやつじゃねえか」
「でも、これは私がやらないと」

光希は揃えた書類を見ながら、そう言った。

「いつ行くの」
「明後日」
「急だな」
「そうだね」

善逸は二つ目のまんじゅうに手を伸ばす。
口に入れるが、味がわからなかった。

「……冨岡さんと不死川さんが側にいれば、さっきの男みたいなのは近寄らないかな」
「うん。それも一つの狙い」
「なるほどな」

「たまには顔を出しに来るよ」
「嘘だ。忙しくて来れない」
「かもね」
「どうせ俺のことなんてすっかり忘れて仕事すんだ」
「そんなことないよ」

善逸は椅子に深く腰掛ける。

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