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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第73章 年越し


沢山の人を失った彼らは、言ってみれば全員喪中である。あけましておめでとうとは言わずに、新年の挨拶を交わした。


「続きまして……」

光希を抱きしめたまま善逸が言う。

「今年の抱負、だね」

光希も善逸に抱きしめられたまま言う。


これも、いつも二人がやってきたことである。

「振り返り」「年始挨拶」「抱負」

出会ってから毎年、育手の所に居たとき以外は欠かさず続けてきたこの流れ。当然のことながら二人はわかっている。


「……………」
「……………」

二人とも今年の抱負を考えて無言になる。

「……………」
「……ちょ、ちょっと待って」

光希が善逸の腕の中で小さく声を上げる。

「なに?決まったの?」
「……違う、ちょっと離して」
「なんで?」
「………いや、その……頭、回んない」

光希が顔を赤くして、片手で善逸の胸を押す。

先程の口付けを思い出したのだろう。光希の心音は飛び跳ねている。
なんとも可愛らしいその行動に、善逸の頬も熱を持つ。

「なに、光希。口付けくらいで、どうしたのさ?」
「…っ、いいから、離してっ!」
「何度もしてるじゃん、俺たち」
「そういう問題じゃ、ないでしょっ!んっ!」

力を込めて善逸を押すが、びくともしない。

「あはは、可愛いね」
「ね、少し離えて」
「どきどきしてるねえ、そんなに気持ちよかった?」
「いいから、離えてよ!」
「離えませぇーん」
「もうっ!」

光希が諦めて力を緩める。
善逸は笑って抱きしめたまま、光希の背中をあやすようにとんとんと叩く。

「俺はもう決まってるからなぁ」
「…………」
「大当たり」
「何も言ってない」
「わかってるでしょ?」
「『世界中の甘味を食す』…かな?」
「そうそう、って違うわ!そんなんしたら太るっつーの!」
「ふふ、今後は気を付けていかないとね」

光希は頬を赤くしたまま、善逸の胸で笑っている。

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