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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第73章 年越し


食事が終わると「今年の汚れ、今年のうちにだ!」と善逸が言い、それぞれがお風呂に行く。

善逸が風呂で髪を洗っていると、伊之助も浴室に飛び込んできてバシャンとお湯をかけられた。


「うおいっ!何すんだっ!あー、足の包帯が濡れただろうが!もう!」
「へへへ、隙だらけだ」
「風呂はいいでしょが!のんびりさせろよ!……っておい、身体洗ってから湯船入れっていつも言ってるだろ」

ぎゃあぎゃあと騒がしくなる男風呂。

「なあ、伊之助」
「んだよ」
「山でさ、光希……泣いてた?」
「ああ。泣いてた」
「いっぱい?」
「すんげえ泣いてた。……ああいうの、俺はどうしたらいいか、わかんねえ」
「そっか」

善逸は頭にお湯をかけて、石鹸を流す。
湯船に行き、伊之助の隣にちゃぷんと浸かる。右足を湯船の縁にかけて、湯に付かないようにする。

「ご飯の時、あいつ元気なかったからさ」
「疲れたのかもな。山道もへばってたぜ」
「背負ってやれよ」
「自分で歩くって言うからよ」

善逸は、光希ならそう言うだろうなと思った。

「あとは、アレだな。帰ってきてからだな」
「帰ってきてから?」
「お前と禰豆子が一緒にいたから」
「えっ……」

善逸は驚く。
禰豆子と話してたところを見られていたのだと初めて知る。やばっと焦る。

「光希……怒ってた?」
「いいや?全然」
「流石に全然…ってことはなくね?ちょっとくらいさ」
「いや、これっぽっちも怒ってなかったぞ」

それはそれで善逸は湯に沈みそうになった。自分はもうヤキモチを妬かれる対象ですらないと思い知る。

「そうかい」
「でも、顔はなんにもだったけど、どっか悲しそうだったぜ」
「悲しそう、か……」

善逸はそう呟くと湯船から上がる。
長湯は怪我に良くない。

「別に、いんだろ?恋人じゃないんだから。光希もそう言ってたぞ」
「良くないよ。だって光希、悲しそうだったんだろ?」
「ああ、それは間違いねえ」
「じゃあ駄目だ。好きな女を悲しませちゃ駄目なの」
「よくわかんねえ」

「お前も好きな子が出来たらわかるよ」

善逸は足を引きずって脱衣場へ向かう。伊之助も湯船から上がってきて善逸が歩くのを助ける。

「ありがと」
「おう」

善逸は風呂に伊之助を残して先に上がった。

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