第10章 想い
善逸と光希は何度も口付けをし、抱擁を繰り返した。
善逸は本当に嬉しそうで満足そうで、好き好きと繰り返して、ようやく想いを伝えられた喜びを堪能しまくっていた。何度口付けても足りない。どれだけ好きと言い合っても、もっともっとと求めてしまう、そんな感じだ。
だが、光希の脳内では徐々に変化が起きていた。
――――……これ、いつまで続くんだ?
なんと、既に飽きてきた様子である。
光希だって、善逸が好きだし、嬉しい気持ちも勿論ある。だが、ずっと同じことを繰り返す善逸に、べたべたくっついてきやがって鬱陶しいやっちゃなぁ、という考えが頭をもたげる。
この辺が恋愛体質の善逸と、ドライな光希の性格差だろう。
しかもよくある男女の反対パターンだ。
飽きてきている光希に気が付く善逸。
「何だよ、お前その顔」
「何が?」
「明らかに飽きてんじゃねぇか」
一応善逸に気を使ってそれなりに対応していたのだが、ばれた。音か…と思う。
「もう……よくね?」
「うわー……そういうこと言っちゃう?お前」
「そろそろ帰んねぇと」
「えええ!俺たち、今日愛を伝えあったんだぞ!『今日は帰りたくない』『俺だって帰したくない』ってなる日なの!わかる?」
「俺は、正直、もう帰りたい」
ひぃぃぃ!と善逸が叫び、光希は耳を塞ぐ。
「うるせーな……。お前の言うとおり、俺たちは今日愛を伝えあったんだから、もうそれでよくね?万事上手くいってて、小躍りしながらそれぞれ帰宅。そういうもんじゃないの?」
「違うね!お前は恋愛を全然わかってないね!」
「まぁそりゃ俺はお前みたいに誰かと付き合ったことはねぇけど……」
「もっと、こう…なんつーかな。相手のことが好き過ぎて頭おかしくなる……みたいな。そういうの、ないのかよ」
「……あんまり、ないな。帰って鍛錬したい」
ぎぇぇぇぇ!とまた善逸が叫ぶ。先回りして耳を塞ぐ光希。
先程、善逸が言った「善逸と光希の好きの違い」を実感する。確かに違うようだ。
酷い!あんまりだっ!俺の事好きって言ったのに!と泣く善逸を宥めて、とりあえず二人は『恋人(仮)』ということになった。