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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第73章 年越し


チュン太郎の案内で山を歩く光希と伊之助。

「……はぁ、……はぁ……ふぅ」
「おい、大丈夫か?顔色悪いぞ」
「ん、大丈夫……、はぁ、はぁ」
「少し休むか」
「っ、はぁ、……ごめん」

光希は木にもたれる。

「おぶってやるよ」
「ふー……、いい、自分の足で行きたいの」
「でもよ」
「時間かかっちゃってごめんね、伊之助」
「それはいいけどよ」

伊之助とチュン太郎が心配そうに覗き込む。
光希は水を飲んで一息つく。

「ふぅ……よし、行こう」
「ゆっくり歩こうぜ」
「うん、あいがと」

光希はまた立ち上がって歩き出す。
しばらく山道を歩いていると、チュン太郎が「チュン!チュン!」と鳴く。

そこは先日チュン太郎が咥えてきたカタバミの花が咲いていた。

「わぁ!」
「おお」

………陽あたりもいいし、綺麗なところ。ここなら、いいよね……

「あいがと、チュン太郎!」
「チュン!」

「ここにすんのか」
「うん。ね、伊之助。伊之助の感覚としては、どこがいいと思う?」
「んー……そうだな」

伊之助はキョロキョロと周りを見渡す。

「あの木の辺りだな。なんかあったけえ感じがする」
「わかった。じゃ、そこにしよ」

光希は背中から鋤をおろし、伊之助の指した木の下を掘る。片手で掘るからうまく進んでいかない。伊之助も隣から手で一緒に掘ってやる。

土を堀りながら、光希はぼろぼろと涙を流した。


今日は鎹鴉の善治郎を埋葬しに、光希はここへ来た。

本当は生家の庭に埋めたいと思っていた。
しかし、あそこは蝶屋敷から結構距離があるため今の光希に帰省は難しかった。しかし、冬とはいえ、木の箱に長期間保管しておくことは出来ない。善治郎が生前、『焼き鳥になるのは嫌だ』と言っていたことから火葬もしたくなかった。

そこで、近くの山に埋めることに決めた。
善治郎と仲の良かったチュン太郎が、光希を励ますための花を見つけてくれた場所。きっとそこなら彼も喜んでくれるんじゃないかと思ったから。


山が得意な伊之助に同伴を頼み、歩けない善逸は置いていかれたというわけである。


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