第73章 年越し
普段着に着替えた光希は、伊之助と一緒に玄関に行く。
明らかに拗ねている善逸が見送る。
外に行くため、伊之助は冬用の羽織を着ている。手には桐の箱を持っており、光希も厚着をして小さめの鋤を背負っていた。
「じゃ、善逸、チュン太郎連えてくね」
「いいけどよ……あんまり遅くなるなよ」
「大丈夫」
「俺がいるんだ。心配すんな」
「あれ?お姉ちゃんと伊之助さん、お出かけですか?」
二人が玄関を出ると、ひょこっと禰豆子が庭から顔を出した。記憶が戻った禰豆子は朧気ながらに光希を覚えており、昔のように「お姉ちゃん」と呼んでいる。炭治郎が「めっちゃん」と呼んでいたこともあって「めいお姉ちゃん」と呼ぶこともある。
「うん。ちょっと用事があってね」
「無茶しないでね」
「大丈夫だよ。あ、禰豆子、善逸が拗ねてっから相手してやって」
そう言って光希は笑う。
「別に拗ねてないやい!」
「あはは、頼むよ」
二人は屋敷を出ていった。
「………はぁ」
善逸はため息をつく。
最近、こういうことが増えている。光希は明らかに善逸と禰豆子を近付けようとしているのだ。
「お姉ちゃん、悪気はないんですよ」
「………わかってるよ」
「善逸さん、元気出して」
「優しいねぇ、禰豆子ちゃんは」
「お姉ちゃん程じゃないですよ。お姉ちゃんもお兄ちゃんも、優しすぎます。……もっと自分にも優しくすればいいのに」
「炭治郎と光希はそれが出来ねえんだよなぁ……」
「ですねえ」
善逸と禰豆子は話しながら苦笑いをする。