第73章 年越し
カナヲは、ふふっと笑っていた。
「なんだ、そんなこと気にしてたの」
「……気にすうよ」
「全然怒ってないよ。むしろ凄く感謝してる」
「感謝?」
「炭治郎を連れ戻してくれてありがとう」
「カナヲ……怒ってないの?」
「光希も血を飲ませすぎて危なかったんでしょ。命懸けでやってくれたことに、怒る人なんていないよ。炭治郎だって善逸だって、絶対に怒ってない。もし怒るようなら、私が怒る」
カナヲは微笑んだ。
「カナヲが怒うと、とんでもなく怖そうだね」
「ふふふ」
「………あいがと」
「こちらこそ」
カナヲは光希の手をぽんぽんと叩く。
光希も少し微笑んだ。
「それが原因なら、私は気にしてないし、善逸と戻ればいいよ」
「いや、そえだけじゃないもん」
「嫌いになったわけじゃないんでしょ?」
「……うん」
「なら、どうして?」
「私は善逸にはふさわしくない」
「それは善逸が決めることでしょ?」
「でも……」
「光希が勝手に『善逸のため』って思ってることは、本当はそうじゃないのかもよ。本当に善逸が望んでることを考えてごらんよ」
カナヲは笑顔を浮かべたままゆっくり話す。
「うん。あいがと、カナヲ」
「どういたしまして」
「……ねえ、カナヲ。私と…友達のままでいてくえますか?」
「勿論。光希はずっと私の友達だよ。光希が私を嫌わない限りね」
「………じゃあ、……一生だねぇ……ふふ」
微笑む光希の目から、涙がこぼれた。
カナヲの目にも涙が浮かぶ。
「カナヲは泣いちゃ駄目!目薬流えちゃう!」
「……ふふっ、誰のせいよ」
「炭治郎のせいだ。あいつ全然起きないもん。もう、全部あいつのせいにしよう」
「あはは、じゃあそういうことにしよ」
二人は泣きながら笑い合った。