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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第73章 年越し


光希はカナヲの部屋に来ていた。

「カナヲ……目、大丈夫?」
「うん、もう痛くないよ。回復すれば少しは見えそうだしね。他の怪我もだいぶ治ってきたよ」

光希は戦いの後、カナヲと会うことはあっても、ちゃんと話せていなかった。
喋れない光希と、目の見えないカナヲ。二人の会話が成立しなかったためだ。

………いや、違う。逃げてただけだ。嫌われるのが怖くて、カナヲから逃げてた……

光希はそう思って、今日、こうしてちゃんと話をしに来たのだった。


「光希こそ、大丈夫なの?」
「まだ、あんまい上手く話せない。聞き取いにくいと思うけど、ごめんね」

「ラ行」など、舌先を使うものの発語をする時にまだ舌が痛むので、舌っ足らずな喋り方になっている。

「無理しちゃ駄目だよ」
「あいがと」
「ふふふ……、なんか可愛いね」
「善逸にも馬鹿にさえまくいだよ、あいつめ」

善逸の名前を出すと、カナヲは浮かない顔をする。

「光希、善逸と別れたって本当……?」
「うん」
「それってさ……」
「うーん……、といあえずさ」

光希は左手でカナヲの手をきゅっと握る。

「ごめんなさい」

握ったカナヲの手に、光希は自分の額を付ける。

「え……、光希?」

光希が自分に頭を下げていることがわかって、カナヲは驚く。

「カナヲは見えてなかったかもしえないけど、私は炭治郎に口付けをしました。本当にごめんなさい」

光希は目をぎゅっと瞑り、謝罪をする。

「カナヲにも、炭治郎にも、善逸にも、心から申し訳ないと思っています」
「光希……、光希が悪いんじゃないんだよ」
「いや、どう考えても私がわういでしょ」
「違うよ」
「…………でも」

カナヲは光希に握られてないもう片方の手を、繋がれた手にそっと重ねた。


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