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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第72章 笑顔を見せて


善逸は自分の骨折に響かない体勢で、光希を膝に乗せる。

「はは、隙だらけー」
「…………」
「お前は俺の側で笑ってればいいんだよ」
「………そんな訳には」
「いいから!喋んないの!」
「…………」

善逸は光希の腰に手を回し、彼女が落ちてしまわないようにしっかりと支える。近付いた光希の顔を、下から覗き込むように見上げた。

「愛してるよ」
「…………」
「お前が首を縦に振るまで、俺は追いかけ回すからね」
「…………」
「嫌そうな顔だなおい」
「…………」

「ま、いいや。お前はお前の道を行くんだろ?俺も、好き勝手するから」

そう言って、善逸は光希に唇を寄せる。
しかし、彼の口を手で防いで口付けをさせない光希。

「……このやろ」

善逸は光希の手を掴んで離させる。

すると光希は善逸の膝からひょいと飛び降りた。貧血でよろりとふらつくが、善逸からさっと距離を取る。

今の善逸は咄嗟に追いかけられないとわかっている。

「こ、こらっ!暴れないの!危ないでしょうが!転ぶぞ!」

光希は、お前が悪いんだろと善逸を指さす。



「……さあ、光希。これから俺に追いかけられる毎日が始まるぞ」

善逸がにやりと笑いかける。


「そんな落ちた体力で逃げ切れると思ってんの?」
「…………」
「だから、早く身体治せ。ちゃんと呼吸で回復しろ。じゃないとすぐにとっ捕まえちまうぞ」
「……うん」

「飯も食え。な?」
「…………」
「今日は伊之助と二人がかりで食べさせるからな」
「……吐く」
「吐いてでも食え」
「…………」


「ちゃんと生きろ。光希」


善逸が優しい目で光希に話しかけた。
光希の目に涙が浮かぶ。


「……ほら、な?俺、格好いいだろ?」


善逸がいひひと笑いながらそう言うので、光希も涙目で笑顔を見せた。
それは善逸が持っているあの写真と同じ笑顔。
彼女の本当の笑顔だった。


「やっと、笑ったな」


善逸も嬉しそうに微笑んだ。


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