第72章 笑顔を見せて
善逸が診察を受けている間に、光希は目を覚ました。
手に持っていた花じっと見つめる。
少しくたっとしてしまった花を、指でくるくると回して眺めた。
吸飲みから湯呑に水を移し、花を挿した。
ベッドの縁に腰掛けたまま、目を瞑って何度か深呼吸をする。そのまま瞑想を始め、自分と向き合っていく。
ずっと避けてきたことを、少しずつ、逃げずにちゃんとやろうと思った。
いつかまた皆のところに行ったときに、胸を張って生きたと自信を持って言えるように。
そして、一つの覚悟をした。
新しい人生を生きるために。
光希は紙と筆を取り出した。
おそらく彼は納得しないだろう。
だが、光希も譲る気はない。
………ごめんな
これを突きつけることに、迷いはない。
心にあるのは、申し訳なさと、この先の彼の幸せを願う気持ち。
ただそれだけだった。