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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第71章 運命の子


光が暖かく光希を包み込む。


『生きようよ』


善逸は、闇夜に光る一本の槍だ。
光が周りの闇を打ち払う。


『ね?』


光希を纏っていた闇が消え、どこまでも続く青空が広がった。
心地の良い風が吹き抜けて、光希の涙を散らす。

目の前には少年が立っている。
ところどころ段違いになってる長めの髪。金髪ではなく、黒髪。彼の本来の姿だ。
善逸が太い眉毛を下げて、優しい笑顔で光希を見ていた。


『ほら、おいで』


光希に向かって手を出す。
吸い寄せられるように少年に向けて手を伸ばすと、手首を掴まれてぐいっと引かれる。


『………頑張ったな……光希』


彼の胸にぎゅっと抱きしめられて、耳元で囁かれる。光希は善逸の胸の中で涙を流し続ける。


「雷……嫌いっ…!」
『はいはい』
「嫌いっ!大っ嫌い……!!!」
『知ってるよ』
「うわぁぁぁぁん……追っかけ回された……」
『お前が逃げるから』
「うっ…くっ………嫌だった……」
『ごめんごめん、よしよし』


善逸は笑いながら親指で光希の涙を拭いてやる。


『さ、目ぇ閉じて』
「……戻りたくない」
『駄目』
「…………」

『大丈夫』

善逸は指でそっと目を閉じさせる。
視界を塞がれた光希。


目を閉じても、もう闇は広がらなかった……





どれだけ時間がたったのだろう。


次に目を開いたら、見たことのある天井が目に入った。
どこだろう……とぼんやりしながら見つめる。少しして、蝶屋敷の病室だと気が付いた。


身体に全く力が入らない。
視線だけ横に向けると、黄色い頭がすぐ隣にうつ伏せている。


「う…ん……」


気配を感じ取ったのか、黄色の頭がもそりと動き、頭を起こす。

光希のぼんやりした目と、善逸の茶色がかった目が合う。
善逸の顔は絆創膏だらけ。彼は少し驚いたような表情を見せた。でもすぐに柔らかい笑顔になって、夢の中と同じように指で光希の涙を拭う。


「…………おかえり、俺の女神様」


そう言って、善逸は光希の頬にそっと口付けをした。



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