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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第71章 運命の子


光の中から声が聞こえた。

『おい!逃げんなこらっ!』

光希は足を止めずに逃げまわる。


「嫌だ!俺はもういいんだ!」
『いいから戻れっ!』
「断る!!!」
『逃げんなっ!剣士だろ!!』
「戦いは終わった!もう剣士じゃねえ!」


雷と光希の追いかけっこが始まる。
雷鳴と叫び声で闇の世界は途端にやかましくなる。

目の前に落雷が落ち、光希は後ろに転んだ。


『速さで勝てると思ってんの?ほら、帰るぞ』
「……嫌だ」
『なんでだよ』
「俺、沢山の人を殺した。失った。………お前を裏切った」
『………いいから、帰るぞ』


姿は見えなくても、光希は雷を善逸だと認識している。
前も雷が連れ戻しに来たことがあったから。

でも、今回はその手を取るわけにはいかない。
彼女は俯いたまま顔を上げない。


「………帰ってくれ」
『断る』
「帰れっ!こっち来んな!」
『嫌だ』
「俺の人生だ!幕引きは自分で決める!!」

光希は光を睨みつけて叫んだ。


『…………なら、なんで泣くんだ』
「え……」


光希は自分の頬を触る。
気付かないうちに、涙が溢れていた。


『お前は、まだ自分の人生を生ききってない』
「…………」
『死ぬ程しんどくても、ちゃんと死ぬまでしっかり生きろよ』
「おい、鬼かよ、お前……」


『“泣いてもどうにもならねぇけど、生きてりゃどうにかなるかもしれない。そうだろ?”』
「…………」
『お前が俺に言った言葉だよ。初めて会った時にな』
「忘れた」
『はい、嘘』
「……なんで…そんなの……覚えてんだ……」
『なんでだろうな』


光希はぼろぼろと涙を流す。
手の甲で何度も拭うが、全然追いつかないくらいに涙が止まらない。

戦闘が始まってからずっと堪えてきた涙が一気に溢れ出した。

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