第71章 運命の子
―――……音も光もない闇の中
光希は一人、膝を抱えて座っていた。
炭治郎を送り出した後、足の力が抜けて座り込んだ。力を使い果たした気がする。
………俺のやるべきことは終わった。やっと終わったんだよね。疲れた。もう何も考えたくない。疲れた。とんでもなく疲れた。もういいや。もう全部、終わったんだから……
ぼんやりとしている。
今まで使い続けてきた頭は、ぐったりとして思考を放棄している。
………暗いところは嫌いだけど、ここは静かで落ち着くし、なんだかこれも悪くないかな……闇を纏った俺にはよく似合ってるだろ……
何も見えない中で、抱えた膝の上に頭を乗せて動かずにいる。
目を開けていても閉じていてもなんら変わりがないので、面倒くさくなってふっと閉じる。
そのまま闇に溶けてしまおうとしていたところに、ドオオオ……ンと響く轟音。
「はっ?!な、何っ?!」
驚いて顔を上げる光希。
視線の先には閃光。
稲光が縦に鋭く走った。
光が少女の姿を照らし出す。
「ひっ……!」
雷が大嫌いな光希は、思わず悲鳴を上げて仰け反る。
すると、また雷が轟音と共に落ちる。
「やっ……!なんで雷っ?!」
起き上がる。
雷から遠ざかろうと走り出す。
後ろにまた落ちる雷。足元から振動が伝わる。
「なにこれ!最悪なんだけどっ!!嘘でしょ?!ゆっくり寝かせてよーーっ!!」
文句を叫びながら走る光希。
「嫌だ!嫌だ!来るなっ!!あっちいけ!!」
しかし、雷は近付いてくる。
「ひぃ……!速いな、ちくしょう!」
躱そうとするが、回り込まれる。
「こんのやろ……」
向きを変えて走り出す。
明らかに雷が追いかけてきている。
なんで
なんで付いてくんだよっ!!
ほっといてくれよ!!!
怖くて、怖くて、ひたすら逃げる。