第71章 運命の子
光希に押されて飛ばされた先で、炭治郎は無惨と再び邂逅する。
身体は元の大きさに戻っていた。
無惨からの、人の弱みに付け込んだ卑劣なる提案をきっぱりと跳ね除け、人間として皆と生きる道を選ぶ炭治郎。
涙を流し、家に帰りたいと手を上に向けて伸ばした。
上空には、鬼を寄せ付けない藤の花。
そこに向かう意志があるということが、炭治郎が既に鬼ではないという証拠だった。
藤の花へ向けて、亡き仲間たちが炭治郎をゆっくりと押し上げる。行け、行くんだ、と声をかけてくれる。
無惨は必死に炭治郎にすがりついて呼びかけるが、炭治郎は迷わず帰ろうとする。
炭治郎は上へ上へと昇っていく。
すると、藤の花の間から禰豆子の手が炭治郎に伸びてきて、二人は互いの手をしっかりと握る。
禰豆子だけじゃない。
善逸、伊之助、カナヲ、皆の手が伸ばされ、炭治郎を引き上げようとする。
………ああ、皆のところに帰れるんだ
沢山の温かい手に迎え入れられるように、薄紫色の藤の花へと炭治郎は入っていく。
その沢山の愛に満ちた手の中に、光希の手は無かった。
死者の中にも……生者の中にも………