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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第71章 運命の子


――――夢の中を歩く炭治郎


身体が重い……
なんだこれ……


あたりは暗闇。
何も見えない中、一人きりで歩く。


あれ、俺、一人なんだっけ
どうして……
ここ、どこだ……
禰豆子……


キョロキョロとするが、誰もいない。
ゾクリと背中が震える。

そんな闇の中、突然眩い光が流星のように目の前に飛び込んでくる。思わず目を閉じた。腕で影を作り、そっと目を開く。
光の中にいたのは、桃色の着物を着た幼い少女。自分の方を見て笑っている。不安な心が、ふわりと消え去った。


『炭治郎ちゃん!!よかった、見つけた』
『!!! めっちゃん!!……どうしてここにいるの?ここ、どこなの?』


女の子に向けて伸ばした炭治郎の手は、とても小さいものだった。


『ここはまっくらけのところ』
『まっくらけ?』
『そう。光希、暗いの嫌い!』
『あはは、暗いの嫌いなら、こんな仕事……仕事?仕事ってなに?』
『ふふふ、なんだろうねぇ』


炭治郎は自分が何を言っているのかがわからない。しかしそれでも、目の前の女の子は笑っている。


『さあ、戻るよ、炭治郎ちゃん』
『どこにいくの?』
『皆の所だよ』
『皆?皆って誰?』
『自分で思い出せるでしょ?』

『うーん……禰豆子のところ?』
『禰豆子ちゃんだけじゃないよ』
『じゃあ誰だろう……』

『……炭治郎ちゃんはね、いっぱいの人に会って、その人たちから沢山愛してもらってきたんだよ』
『そうなの?』
『そう。皆、待ってるよ。こっち』


光希の小さい手が、炭治郎の小さい手を取る。
その愛しい手を握って、光希は歩き出した。

炭治郎は引かれるままに付いていく。


闇がどんどん晴れてくる。


『わあ、明るくなったね!めっちゃん』
『そうだね……』


炭治郎は笑いかけるが、少女は悲しそうな顔をする。


『めっちゃん……?』
『炭治郎ちゃん、今までありがとう』
『え……』
『よく頑張ったね』
『なにを言ってるの?一緒に、』
『行けないの』
『ちょ、ちょっと……』


少女は繋いでいた手を離し、強い光へ向けて炭治郎をドンと押した。
炭治郎だけが光の中に吸い込まれる。


『さよなら、炭治郎ちゃん』


少女の姿が闇に消える。



『後は皆に引き上げてもらって……』



その声だけが、炭治郎の頭に響いた。


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