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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第70章 最強の鬼


そして、総仕上げという感じに光希が善逸に次の歌の指示を出す。


「あー」光希が音を出す。
『あー』善逸が合わせる。


二人がこの日初めて音を確認し合った。
そして、せーのも言わずに互いの呼吸のみで歌い出す。



 帰りなん いざ 帰りなん
 思い出の 場所へ

 帰りなん いざ 帰りなん
 懐かしの 故郷(ふるさと)へ



入りから難しい音の歌だった。先程までとはレベルが違うとわかる。しかし、二人はぴたりと音を合わせて美しくハモる。



 「旅立ち決めた 暁月夜(あかつきつぐよ)」
 『震える足に 心立つ』
 「喜びも 悲しみも」
 『慈しみも 憎しみも』

 決意と共に 抱き入れる
 
 遠く離れても 先が見えなくても
 信じた 道を ひたすらに



それぞれのソロも、情緒たっぷりに歌い上げる。



 あの夜 …、



そこで不意に途切れる歌声。
光希がうずくまって吐血した。

炭治郎がピクリと動く。
止まりかけていた管が、グンと伸びる。

血を吐きながら光希は善逸に目を向ける。頷いた善逸は、光希の両肩を支えて主旋律を受け取って歌い始める。



 あの夜 見た月 星の瞬き
 久遠(くおん)の光 輝いて



善逸一人の歌が響く。
光希よりも柔らかく、優しさの色が強い歌声だった。



 空は 蒼く 澄み渡り
 大地は 緑 映え渡る

 思い出溢れる 懐かしの
 あの故郷へ 優しい故郷へ

 帰りなん いざ 帰りなん
 紫雲を連れて 帰りなん……



寄り添いながら歌う二人を見て、ああそういうことか…と皆が思う。

この二人はただの同期ではない。
信頼と愛情の強さが、二人の関係性を物語っている。

しかし、ただの恋人……とも何か違う。
竈門兄妹と似たような絆が、光希と善逸の間にも見える気がする。



光希は善逸に支えられながら、息の荒いままゆっくりと身体を起こした。


その目はしっかりと炭治郎を見ている。


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