第70章 最強の鬼
光希は声を張る。
「カナヲ!!!待機!!!」
カナヲはビクッと足を止める。
片目しか使えないが、光希の姿を視界に捉える。
光希が『見えてるか?』と視線を向けると『うん』と頷く。
『少し待て』と身振りで伝える。カナヲはまた頷いて、気配を消して座り、待機する。
「皆!指示を与える!よく聞け!!」
炭治郎が暴れまわる中、光希は叫ぶ。
「武器を持ち、炭治郎の攻撃から己と仲間の命を守れ!!もう攻撃の必要はない!!………炭治郎を殺す方法は、ない」
戦場の誰もが目を見開き、自分の耳を疑う。
………諦めたってこと…なのか?
皆が青ざめて震え出す中、光希は続ける。
「ここから、作戦を変更する!!」
自信に満ちあふれた迷いのない声だ。
「冨岡!我妻!嘴平!栗花落!禰豆子!……そして、俺。炭治郎と縁の深い者たちで、炭治郎を人間に戻す!!!各々の判断で、戦いながら炭治郎に呼びかけろ!!!」
息継ぎの度に、光希の体に激痛が走る。
「他の者は、その支援だ!支援しながら、命を守れ!!死ぬな!!!俺たちは諦めない!!!絶対に出来る!!!信じろ!!!」
息が切れる。
それでも叫ぶ。
「これは、俺からの最後の指示だ!!!この先誰一人として、死ぬことを許さない!!!わかったか!!!」
魂を込めたその叫びに、皆が沸き立つ。
力の抜けた腕で刀を持ち、立ち上がって声を上げる。独りじゃ弾けない炭治郎からの攻撃も、数人で協力して仲間を守る。
光希は素早くカナヲの元へ走る。
彼女の側に寄り、手短に指示を与えた。
すぐさま、横に飛んできた炭治郎の管を弾いて隠を助ける。
「炭治郎!!聞こえるか!!聞こえるはずだ!!自分と戦うんだ!!お前は誰だ!!」
光希は呼びかける。
「炭治郎!戻ってこい!!」
「しっかりしやがれ!!」
「負けるな!炭治郎!!」
「お兄ちゃん、頑張って!!」
義勇が、伊之助が、善逸が、禰豆子が叫ぶ。
炭治郎に変化はない。
が、それでも奇跡を信じて声をかける。