第69章 命の限りに
「………すみません、炭治郎を見てきてもらえますか」
善逸が隣の隠に声をかける。
「こいつ、言い出したら聞かないんです。俺は足が折れてるから動けない。この点滴をこうして持っていればいいんですよね」
「あ、はい……」
「善逸、俺が行くから」
「うるせえ!!じっとしてろこの馬鹿!!」
今度は善逸が怒鳴る。
総司令官に対してとんでもない口の聞き方をする一隊士に、隠たちは固まる。「本当コイツ何者なの?」という顔をしている。
「俺も、お前を死なせたくねえんだよ!」
善逸は光希を睨むように見る。
「……わかったよ」
光希は立ち上がろうとしていた腰を下ろした。
ただ、横になる気はないようで胡座をかいて座っている。
「もう終わったんだ。な、少しは休め」
「………そう、なのかな」
「無惨は消えた。終わりだよ」
「うん……」
「だから、帰ろう。一緒に」
「…………」
光希は俯く。
大勢を失って、自分が生き残ってしまった。やはり自分は責任を取らねばならない。
「……妙な事考えてんじゃねえぞ」
「………別に」
「じゃあ何でそんな顔すんの」
「身体が痛いからだ」
「嘘つき」
光希は座ったまま、周りを見渡す。
負傷兵の治療に、皆が慌ただしくバタバタと走り回っている。
………疲れてるだろうけど、頑張ってくれ。もう誰も死なないで……
炭治郎の無事を祈りながら、善逸と二人で並んで座ってその様子を見ていた。