第69章 命の限りに
「謝ることは何もない」
善逸が光希の手を握る。
一部始終を見ていた善逸。
足はバキバキに折れていたが、隠の肩を借りて光希のそばに来た。
「お前のせいで死んだ者はいない。助かった者はいてもな。だから、謝らないで」
善逸は祈るように目を閉じて、握った光希の手に顔を寄せる。
二人の関係を知らない隠たちは、善逸のこの距離の近さに「何だコイツ」と不信の眼差しをむけている。
先程の義勇とのやりとりの時とはえらい違いだ。
それらを善逸は耳で聞いてわかっているが、お構いなしに光希の髪を触る。
「………こんなに短くしちゃってまあ。せっかく伸びてきてたのによ。男みてえじゃん」
善逸が苦笑いをしていると、気配を感じて光希がふっと目を開く。
「ぜ……いつ、……よかった、生きてた」
「生きてるよ。伊之助もカナヲちゃんも生きてる」
「みんな…は……?」
「冨岡さんは大丈夫。不死川さんも生きてるみたい。悲鳴嶼さんはさっき……、伊黒さんと甘露寺さんもさっき……身罷られたよ……」
「……炭…治郎は……?」
「………わかんねえ」
「…………」
善逸がそう言うと、光希はぐぐっと身体を起こす。
「……いっ、…ぐっ、……はぁ、はぁ……」
「光希!動くなっ!」
「如月様、駄目です!出血が酷いので!」
「炭治郎が無事か知りたい」
「駄目だ、お前はここで治療を」
「俺はもう、誰も死なせたくないんだ!!」
光希が震えながら叫ぶ。
それを聞いて、善逸はため息をつく。