第69章 命の限りに

無惨は太陽光から逃れる方法として、体を大きくした。瞬時に焼き尽くされるのを防ぐためである。


「！！！」

義勇は咄嗟に刀から手を離し、最も無惨に近い位置にいる光希の襟を掴んで後方に投げ飛ばす。

そんな義勇を、炭治郎は後ろ頭突きで押し、下がらせた。

刀から手を離さない炭治郎だけが、ズブズブと膨れ上がる無惨に飲み込まれていく。


「炭治郎ーー！！！」


ひっくり返った光希と義勇の目の前で、炭治郎は無惨の身体に入っていってしまった。


「炭治郎！！炭治郎！！！うわあぁぁ！！」


炭治郎が飲み込まれた。
光希は取り乱し、膨れ上がった無惨に駆け寄る。


「よせっ！光希！！」

無惨が上空から拳を振り下ろす。
義勇は光希を抱えて跳び、ギリギリで回避した。


「おい！しっかりしろ！！落ち着け！！」
「あ……す、すみません」
「無惨の逃亡を止めるぞ！」
「はいっ！」


一瞬、師弟に戻る。
義勇は無惨を追いかけて走っていく。

光希は自分の頬をパチンと叩き、切り替えようとする。


落ちていた自分の刀を拾い、光希も追いかけて走った。


………止めなきゃ！無惨を！！しっかりしろっ！！

そう思いながらも、震えが止まらない。


炭治郎！炭治郎！炭治郎っ！！

光希の心が悲鳴をあげる。



輝利哉の指示で、無惨の足止めが始まる。
隠や隊士を使っての総力戦だ。家具を落とし、車や電車を使って行く手を阻む。

その隙間を縫って、不死川、伊黒、義勇が無惨を切り刻む。悲鳴嶼は無惨に鎖を巻きつけて逃亡を阻止しようとした。

皆ボロボロで、動けていることが不思議なくらいだ。それでも、例え浅い斬撃であっても、しっかりと刻み続ける。柱としての誇りを持って懸命に戦っている。


そんな中、光希の攻撃だけが弾かれる。
片腕だからというのもあるが、それ以上に激しい動揺のせいで正確な太刀筋での攻撃が出来ない。


「……くっ」

悔しさで眉をひそめた。