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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第69章 命の限りに


「あと少し……あと少しなんだ………」

混濁する意識の中、光希は呟く。


「頑張れ…炭治郎……頑張れ、皆……」

閉じそうになる目で、戦況を見つめる。


その目に映るのは、あまりにも残酷な光景。

最期の力を振り絞って無惨の腕を引きちぎった甘露寺が倒れ、おどろおどろしく開かれた無惨の口に食べられそうになった炭治郎を庇った伊黒が噛みつかれる。


………ああ、皆が死んでしまう。目を背けるな……次の策を、早く……!


不死川が飛び込んで無惨の腕を斬る。
炭治郎同様、刀を突き立てて無惨を壁に固定する。


光希は東の空にちらりと目を向ける。

来た。
ついに来た。


「夜明けだ!!」

不死川の叫びと共に登る朝日。



無惨の目が見開かれる。
しかしその目は絶望ではなかった。


追い込まれた無惨は衝撃波を放ち、隊士たちを振り払った。
伊黒は上空へと吹き飛ばれ、不死川は地面を滑るように弾き飛ばされる。

そして、炭治郎の左腕が無くなった。


「炭治郎!」


それでも刀を離さない炭治郎。
悲鳴嶼の岩押し鍛錬で鍛えた下半身で踏ん張り、一歩も下がらない。
片手でひたらすら刀を強く強く握りしめている。


「た…んじ…ろ……」


その姿に光希の目に涙が滲む。


………お前は強いな。本当に強い


光希は無惨を前に、最期の命を燃やす炭治郎の後ろ姿を見た。

光希は彼が亡き炎柱の鍔を刀につけ、いつも『心を燃やせ』と奮い立たせているのを知っている。

炭治郎は燃やしている。心を。命を。


………負けてられない!俺だって!!


光希は立ち上がる。



義勇が炭治郎の元に駆け寄り、炭治郎の身体を支えながら残された左手で柄を強く握った。

赫くなれ……っ!!

二人は祈るように刀を握る。



そこへ、ゴオッという音と共に光希の刀が振り下ろされた。炭治郎の刀とよく似た色の濃紺の刀だ。

キンッ……と刃が当たると、二人の握力と相まって炭治郎の刀がカッと赫くなった。


光希はそのまま刀を振り、無惨の身体を斬りつける。

正確で鋭い斬撃だ。集中しているのがわかる。



無惨が太陽光に焼かれ、悲鳴を上げた。


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