第2章 もしかしてお前は…
歩きながら伊之助の話を聞く光希と炭治郎。
親も兄弟もなく、力比べだけが唯一の楽しみという伊之助の話をきいて、ホロリとする炭治郎。
炭治郎はきっと温かい家庭で育ったんだろうな…と思う。だからこそ、こんなに優しく真っ直ぐに育ったんだな。
そして自分の境遇を思う。
親も兄弟もいないのは伊之助と同じだ…でも。
背中から感じる温もり。自分にはこいつがいたんだなぁ……と実感した。
そう。背中で寝ているこいつ。
「おい……」
突然一人で、話始める光希。炭治郎が不思議そうな顔をして振り返る。
「……おいこら善逸」
光希は足を止める。
「………お前、……起きてんだろ?」
少し顔を後ろに向けてそう言うと、背中の善逸がピクリとする。
……やっぱりか。少し前からなんとなく気付いてたけど。このやろ……!
「…あ、……へへ、今、起きた」
「嘘付け!!」
光希は手を離して善逸を背中から落とす。地面に落ちて「あだっ!俺、怪我人!」と騒ぐ善逸。
「起きたなら自分で歩け!」と光希はスタスタ歩いて炭治郎の隣に行く。
「待ってよー」
「善逸、光希も怪我してんだ。自分で歩けるなら歩かなきゃ駄目だ」
「…ったく、楽しやがって。重いっつーの」
よろよろと付いてくる善逸。
光希は炭治郎の隣を歩く。
「なぁ……光希、……一つ聞いていいか?」
「ん?何?」
「君は……もしかして、女の子か?」
…………って、ええええええーーー?!
最近俺が聞きたくて聞けなかったやつをあっさり聞いた炭治郎ーーー!!!すげーー!!とんでもない奴だなおい!!!
善逸が目をまん丸に見開いて心の中で大絶叫をかますと、
「ああ。そうだよ」と光希。
えええぇぇぇー!!あっさりーー!!
あっさり認めたんですけどーー!!!!
まじでぇぇぇー何それーー!!!!
「やっぱりか、そんな気がしたんだ。
俺は鼻が効くんだ。光希には、男にはない優しい匂いがする」
「へえ、匂いでわかるのか。凄いな。
あまり気付かれることはないんだけどな」
「あと…なんだか懐かしい匂いがする」
「俺も。匂いじゃねえけど…なんだろな」
なんか口説かれてる?
何これちょっとお二人さーーんっ!
善逸は一人、彼らの後ろで混乱していた。