第69章 命の限りに

………俺は途中参戦だ。もっとやらなきゃ。炭治郎を守るんだ！


共闘しているとはいえ、無惨への主たる攻撃は炭治郎のヒノカミ神楽だ。光希は技の強化をしながら無惨の攻撃から炭治郎を守っていた。


なんとか必死に守るものの、攻守を一人でやるのはかなりきつい。


……くそっ、目が眩む


「はー…はー…、光希っ……頑張れっ！！」
「はぁ、はぁっ……か弱い乙女でごめんなさいねぇ！まだまだっ！！」

光希がふらつき始める中、炭治郎にも限界が迫る。酸欠になり、視界が歪み、足を取られて滑った。


「……うぁっ…」
「炭治郎！！！」

炭治郎に襲いかかる無惨の攻撃。
光希はそれを弾こうと飛び込むが、右側面から自分にも無惨の吸息攻撃が向かってくるのを感じた。


………どっちも防ぐのは無理だ！


一瞬でそう判断した光希。

迷わず炭治郎の方へ向かう。
自分の命の方を捨てた。



その時、光希の身体を横から飛び出した何かが押した。


「え……」


炭治郎へと向かっていた身体が、進行方向を変えて無惨から遠ざかる。


光希は揺れる視界の中、炭治郎も縞々の影に助けられるのを見た。



そして自分にしがみついている男。

身を呈して光希を助けたのは、不死川邸で光希に告白をしてきた隊士だった。


「……如月」
「おい！しっかりしろ！！」

光希は隊士に呼びかける。
その隊士は右足がなくなり、身体のあちこちから大量の出血をしていた。


「無事…か……？」
「ああ、お前が助けてくれたから」
「よか…た……」
「おいっ！」

「お前は…死ぬな……」
「やめろ！なんでお前がっ……！」
「死ぬ…な……」
「お前もだ！生き残って、俺にもっかい玉砕しにくるんだろ！」

「へへへ……お前を庇って…死ぬなら……俺は、嬉しいよ」
「ふざけんな！！」
「俺は…ふざけてる如月も……大好きだった…よ」

隊士はゆっくりと目を閉じる。
光希は男をぎゅっと抱きしめる。まだ彼が聞こえるうちにちゃんと伝えなければ。

「………応えられなくてごめんな。でも、貰った命で必ず勝つ。ありがとう」
「……うん…ありがと…」

青年は息を引き取った。
光希はそっと隊士を横たえる。